お腹がすいては、山は登れぬ
幸江N
入会して間もない山行で、まともに朝食を取らず登ったところ、即効バテて荷物を持って頂き、大変ご迷惑をかけたことがありました。山に登るためには、まず体力が必要、体を動かすエネルギーあってこその体力ということで、安全登山について栄養学の面から考えてみました。
☆登山中の消費エネルギーは基礎代謝量と行動中のエネルギーに関わります。基礎代謝量は、一般的には、女性1200kcal、男性1400kcal程度です。さらに登山中は次の計算式のエネルギーが必要となります。
登山中の消費エネルギー=体重×歩行時間×5kcal(空身の場合)
荷物が多いと消費エネルギーはさらに増えます。
☆登山のエネルギー源となる食品は、炭水化物です。炭水化物は、食物繊維と糖質に分類され、糖質は山で最も重要な栄養素です。糖質は、即効性のあるエネルギーですが、あまり長続きしないという特徴があります。そのため、行動中の炭水化物の補給はできるだけこまめに、休憩時毎に摂ることがポイントです。
また、脳のエネルギー源は糖しか使えないので、糖質が不足すると脳の働きが低下し、注意力が散漫になり、感覚や運動神経の機能低下も起こって、事故にもつながりかねません。山の事故が多く起こる間の時間帯午前11時〜午後3時あたりは要注意です。
手軽に摂れるサプリメントも上手に摂るとよいでしょう。最近はアミノ酸系のサプリメント、BCAA(分岐鎖アミノ酸・・・必須アミノ酸バリン、ロイシン、イソロイシン)が注目されています。筋肉のエネルギーがなくなりそうなときにBCAAが補給されると持久力が高まる効果があります。
☆山で食べるとよい食品
朝食・昼食・・・遅効性のでんぷん類(おにぎり、パン、サンドウィッチなど)
登山中・即効性の糖質、塩分、クエン酸(クッキー、ナッツ、甘納豆、塩飴、梅干など)
登山前、登山中、登山後・・・アミノ酸系のサプリメント
登山後・・・糖質とクエン酸を30分以内に、たんぱく質もバランスよく
山行中、みなさんがどんな行動食を食べているかいつも興味深く観察しています。「孤高の人」の主人公、加藤文太郎の行動食は小魚と甘納豆だそうです。私の最近のお気に入りの行動食は、半平・ちくわなどの練り製品(塩気がいい塩梅)、ういろう(名古屋名物)です。栄養補給を上手に行って、今後も安全登山を心がけたいです。