安全登山のために
       No,26

 

安全登山と危険予知・想像力

正M

計画段階あるいは実際の行動時に、いかに危険を避け、万が一出会ってしまったときにいかに対応できるか、ということが安全な登山の基本だと思います。そこで、前者の「危険を避ける」について少々考えてみたいと思います。発生するかもしれない危険があらかじめ見えていれば、当然、危険を避ける事ができるが、もし、その危険が見えなければ危険に出会う可能性が高くなるでしょう。この危険をあらかじめ予想し指摘しあう訓練はKYT(Kiken Yochi Taining)と呼ばれ、交通安全や製造工場での作業における危険防止に有効な訓練方法として広く用いられています。登山時の計画立案や実際の行動においても、この手法は有効だと考えられます。例えば、登山の時期が晩秋や初冬であれば降雪があるかもしれない、とか、ルート上の尾根にある分岐点は見つけにくいかもしれない、とか、あらかじめ可能な限り(できる限りたくさん)危険を予知することです。

しかしながら、山にはどんな危険が潜んでいるのかある程度知らなければ、想像することすらできません。それを学ぶのが、会のセミナーや連盟の講座や訓練です。また、定例山行では諸先輩の計画立案や実際の行動を見ることも有効です。ただし、学習できない危険もあるでしょう。それに対しては、その場で発揮する想像力と応用力が必要となってきます。それは、日頃あたりまえだと思っていることに対しても、いつも考え続けることによって身についていくのではないでしょうか。そうやって、安全な計画ができ、安全に行動できる自立した登山者になっていくものと思います。

私たちが必ず携行するベーシック装備は、先人の経験の上に成り立ってきたものであり、そこにはいろいろな意味があるはずです。いちど、ベーシック装備の一つ一つについて、どんな危険が潜んでいるからその装備を持っていくのか、自分自身で想像をしてみることも良いトレーニングになるのではないかと思います。