加代O

 実は温泉にはあまり興味がなくて、原稿依頼が来た時もちょっと困ってしまった。

温泉が目的で旅行した事も無いし、山から下りて入った温泉もいくらかあるものの、興味を持って見ていないとぜんぜん記憶に残らない。私の考える温泉のイメージは山あいのひなびた場所だとか、川の中に露天風呂があるものであって、大浴場やサウナなど色々な設備がそろっているレジャー施設ではない。だから、温泉について書くことはほとんどないけれど、 お風呂だったらひとつ思い出した出来事があった。それもずいぶん古い話しだけど・・・。

 登った山は大台ケ原。たぶん11月のはじめ頃でまわりの山々が紅葉で美しく染まり、大蛇ーからの眺めは最高だった。20代の間に大杉谷から大台ケ原へと何回も通うきっかけになったのがその山行で、その夜は大和上市の小さな民宿に女性2人、男性3人のグループで泊まった。そこは老夫婦が営む民宿で、私たちの他にも泊り客はいなかったと思う。そこの風呂が五右衛門風呂で、1人しか入れないくらいの大きさの風呂釜だったが、私にとっては初体験でどうやって入るのか全くわからず結局お湯に入るのをあきらめてしまった。

そして、それ以後五右衛門風呂に入る機会はめぐってこなかったので、しばらくの間やりかたを知らずにいたのだった。

 これから先行ってみたいと思う温泉というと庄川峡にある大牧温泉(船でしか行けないところがおもしろい。)そして北アルプスの奥深くにある高天原温泉。秘湯という名がふさわしいのはここなのではないか・・・と思う。