2013.3.23 奥三河・三瀬明神山
柿野バリエーション〜三瀬ダイレクト尾根を歩く
ワクワクしながら 矢倉圭子
今回のルートは、東三河山ぽ会の「わたしたちの明神山」というルート本に紹介されているルートである。岩場の登攀や懸垂下降とワクワクするようなルート。メンバーは洞井さんと杉浦さんにお願いした。
初っぱなの駐車場で少し迷ったが、無事に予定の三本杉橋を越し分岐を右に取り、すぐ先のちょっとした空き地に駐車できた。そこから先は林道歩き。真正面に目的地の明神山の姿が見える。谷筋を確認しながら進み、20分ほどで林道終点となる。P606のコルにコンパスを合わせ尾根に向かって谷道を登る。小枝を掻き分けながら踏み跡をたどると、予定のコルより西側に出た。尾根の道は真っ直ぐ一本筋に突き上げていた。急登にやられながら行くと、やがて最初の岩場。ハーネスを装着しザイルを使用。洞井さんのリードに続いて私がマストで固定、末端に杉浦さんの順で登る。高度感があるが、見た感じは簡単そう。しかし、浮石と落ち葉が足元を不安定にしている。慎重に3ピッチで小槍に到着。少し下るとドーンと山頂直下の岩場。再度ザイルを出し、木をつかみながら落石に注意して登るが、1ピッチ目で石を落としてしまった。脆いことがわかっていたが慎重さに欠けていた。2ピッチ目はやせ尾根通過。3ピッチ目はスラブ状の大きな岩場。支点もとれず登攀は諦め、右の巻き道を行く。しかし、巻き道とはいえ、岩壁に細めの丸太一本が針金で固定されているだけの道だった。ドキドキしながら、ようやく主稜線に到着。何人かの登山客とすれ違い、山頂に到着。展望台からは、遠くのアルプスの山並みが望めた。写真を撮り、早々に下山。
山頂より一般道の三瀬道を行く。馬の背を越し、ダイレクト尾根は、最初の尾根を左に入っていくが、分岐がわかりづらかった。踏み跡を辿り下りて行くと赤いテープを発見。そのまま急降下したが尾根が不明瞭となる。地図で現在地を確認するとダイレクト尾根ではないようだ。ここがこのルートの核心部か一番迷いやすい箇所だった。テープの箇所まで戻り、南に少しいくと山腹に岩場を発見。地図で確認するとダイレクト尾根だと確信する。その先には幾つもの赤いテープもあった。尾根を外さぬ様に、木をつかみながら急下降を続けると断崖となり懸垂下降で通過した。その先、岩場があるが、巻き道もあった。しっかりとした踏み跡を辿りP500地点を確認。どんどん進むと尾根の末端に到着。そこにはちょうど駐車した車があった。
今回久しぶりの登攀だった。先々の行動が読み取れず、アワアワしてしまった。まだまだ自分のモノになっていないことを痛感し反省しました。地図読みに登攀と大変だったが楽しめたルートでした。
頑張りました! 杉浦 茂治
愛知の山、三瀬明神山のバリエーションル−トに行って来ました。通常の登山口より手前に三本杉橋とあったが苔で見えづらく通り過ぎてしまった。三本杉橋を発見し、橋を渡って、すぐを右に曲がり50m先にある1件の民家の近くに車を止めたのが7時ちょい過ぎぐらいでした。すぐさま準備をして林道沿いに出発しました。
事前に東三河山ぽ会の方々が出した本を読んで、行けるのだろうかという緊張と出来る限りやるぞという期待が混ざっていましたが、林道から山頂の展望台が見えた時は、『よし行ってやるぞ!』という気持ちが大きくなってきました。20分ほど歩き林道を終了して、沢沿いに踏み後が北西にありコンパスを合わせ、それをたどりながら支尾根鞍部を目指しました。かなりの急坂で8時頃にやっと尾根に乗ったがまだ急坂が続いてました。
さらに30分程登ると目の前に岩稜帯が出現しました。ハ−ネスとヘルメットを着けていざ出発。確保をしてもらいながら登攀をしました。岩が脆いと書いてあったが、予想以上に脆かったです。岩が剥がれるというより、岩が土に埋まってる感じで根こそぎ崩れる感じでした。落石をしないように、3ピッチ登り、9時30分頃に小槍を通過し、山頂直下の岩場に出ました。思ったよりも高度感があり緊張気味で臨みましたが、緊張のあまりザイルの取り扱いが雑になってしまい注意される始末で反省をしました。途中、20cm大の石2個の落石に合いましたがセルフビレイに使っていた木の陰に入り危機を免れ、良く見て逃げる方向を決めないといけないのだと思いました。3ピッチ登った所で、ようやく登山道に出ました。まだか、まだかと思っていたのがやっとになり気持ちは『ほっと!』したのが4割、『やったー!』というのが6割で凄く気持ちがよかったです。
そこから3分程度歩いて頂上に着き、時間で11時位でした。休憩した後、さらにバリエーションル−トが続くのです。
降りはダイレクト尾根で、地図上では本当に1本の尾根ですが、下降点が重要でした。一般道を三瀬の方へ降り、馬の背の梯子を降り、ちょっと行った所から一般道からはずれ尾根に入ります。所々、重要な所にテ−プがしてあり、地図を読みながら降りました。12時過ぎ位には懸垂下降をやりましたが、ザイルで石を引っ掛けてしまい20cm位の石が目の前に…!よく見て左側へ逃げました。体を振った時とかには、ザイルの上の方がどうなっているかの確認をすれば落石は起こらなかったのではないかと思い、以後確認しながら気をつけて行動をしようと思いました。
ここまで来ると尾根沿いに進むだけで踏み跡も見えました。地図上では3つのピークになっていたが、実際は5m位のゆったりした登り・降りがかなり続き、実際に今どのピークなのか分らなくなり、もっと辺りを見て把握しないといけないのだと思いました。最後の降っていると民家が見えて来たと思ったら、自分の車も見える…本当の前に出た時はびっくりしました。本当のダイレクトだなと冗談を言いながら1時半頃に降りてきました。
適度な緊張感とハラハラ感などで楽しく、色々な事に気が付き、勉強になって充実した山行でした。これからもこの経験を生かして行けるようにしたいです。
いっぱい歩くルートを… 洞井 孝雄
県連総会の帰りだったか、「普通のルートじゃないところをいっぱい歩きたいんですが」と、声をかけられた。この日しか空いてないことを伝えると、しばらくして、「明神山、どうですか? 行きましょう行きましょう」という話が出てきて、今回の計画になった。
一昨年の11月、婦人部の女性交流登山で登った明神山の三瀬口からのルートはなかなか変化に富んでいた。その途中、東三河の仲間から「あの尾根もトレーニングで使うんですよ」と、ダイレクト尾根を教えてもらったのだが、今回は、三瀬口の手前から北側の林道を歩いて、林道終点から北西に延びる尾根をたどって山頂を踏み、そのダイレクト尾根を下降するという、なかなか手ごたえ、いや足ごたえのありそうなコースであった。
3月23日(土)、5時出発。メンバーは杉浦茂治、矢倉圭子、それに私の三人。
東名高速~豊川を通って東栄町へ。天候は晴れ。事前に付近の概念図や、資料の記述を見て、「あそこからだな」と早合点し、三瀬の登山口まで入ったのだが、どうも様子が違う。行き過ぎた。林道の分岐の小さな橋まで戻る。見にくいが「三本杉橋」。林道の標識もある。間違いない。よく来ている人はすぐに分かりそうだが、よそ者は注意しないと間違えそうだ。車を降りて、沢に沿って歩き始める。沢の底は鳳来湖畔に注ぐ川特有の一枚岩、ナメ床の上を水がトロリとした感じで流れている。林道の終点から、灌木の間にうっすらとつけられた踏み跡をたどっていく。植林の手入れに使われているらしく、途中から少し明瞭になった道は、やがて植林の広い山腹にうっすら見える踏み分け道になる。見上げると、どぉんと急な傾斜が直上している。「おい、まっすぐじゃないか。しかもなんだ、この急な傾斜は…」愚痴ると、仲間たちも苦笑。息を切らせながら尾根の末端に上がる。608mのピークより山頂寄りの地点だ。ここらは尾根上のアップダウン。急な小ピークに登りつめると、樹林のなかにぽつんとケルンが。「ここが小槍ですか…」「わからん」。いったん下ってまた登り返すと、木々を透かして岩が現れた。足元は鈴鹿にもよくあるような、少々急な、岩の露出した尾根道のような感じだが、一応ハーネスをつけ、ロープを出して確保しながら登ることにする。岩の隙間は針葉樹の落ち葉で埋まっていて、その下は黒い泥の草付き。傾斜が急なのと、落ち葉が滑るのと、岩と岩の間の地面が不安定なのとで、歩きにくい。岩はもろいし、左右は切れているので、アンザイレンは正解だった。ザイルをつけたまま、3、4ピッチ登ると、やがて山頂直下の岩場が現れた。おそらく15m〜20m程度のピッチだろう、岩は渇いていてフリクションもよく利く、草付きのクラックから右上のフレーク状をたどれば難しくはない。登れると踏んだが、外傾した岩で、ビレイポイントがない。出だしの一歩で身体を持ちあげ、立ちあがって次の一歩を踏み出そうとして、「行き詰ったら、果たして下れるか…」などと考えたら、もうダメである。そのまま続けてリードする気になれず、「やっぱり巻こう」と、取り付きから右手に続くうっすらとした踏み跡をたどった。巻き道とはいっても岩場の切れた部分をトラバースしたりするので、それほど簡単ではない。転がった丸太をよく見ると端が細い針金で固定されている。その下は深く切れ落ちている。第一、丸太そのものが信用できない。体重を預けるのに躊躇しつつ、足を乗せ、廻りこんで樹林の中に入り、斜面を少し登ると、柿野方面からの登山道に合流した。やれやれである。山頂にいる人たちの話し声が聞こえてくる。ザイルを巻き、登山道をたどると1、2分で明神山頂上に着いた。展望台からは中央アルプス、南アルプス方面がよく見える。ひと息入れて、三瀬道を下る。馬の背の岩場のハシゴを下り、しばらく進んで左側の顕著な尾根にはいる。ダイレクト尾根の取り付きである。樹林の中のかすかな踏みわけ道をたどりながら下っていくと、しばらくして尾根筋が途切れる。先ほど見た目印まで戻る。地図を見ると少し南にトラバース気味に振ってさらに顕著な尾根筋を下降することになっているのだが、わかりにくい。山腹を巻くようにして進むと、樹間を透かして右手に岩が見える。地図上で同定して進むべき方向をみると一本の木に目印があって、その脇から再び顕著な尾根が続いている。全体を通じて数か所しかなかった目印だが、要所要所を押さえてつけられていて見事だった。20mほどの岩場で一か所、懸垂で下降したが、脇には巻き道があり、廻り道することさえいとわなければロープは使わなくてもよかった。尾根筋の傾斜も緩やかになり、足下の木々を透かして民家の屋根が見えるようになるが、なかなか尾根が切れない。しかし、それもいつかは終わる。木々がまばらになると尾根の末端に出る。目の前の草の斜面の向こうに、朝止めた車が見える。「へえ、ここに出るんだ」
ダイレクト尾根というのは、ダイレクトに車まで下りてくる尾根のことだったのか? などと冗談を飛ばしながら車の横に降り立った。楽しい山歩きであった。
今回の山行は、東三河山ぽ会の地域研究の結晶、『わたしたちの明神山』という冊子に紹介されていたルートを歩いたのだったが、その正確な記述に助けられた。
2013年3月23日
05:00 洞井さん宅発
07:10 P着
07:13 P発
07:30 林道終点
08:02 支尾根鞍部の西に出る
08:04 休憩 08:08 発
08:30 岩場にてハーネス装着
ザイル使用3ピッチ
09:26 ザイル回収
09:28 小槍 通過
09:36 山頂直下岩場
ザイル使用3ピッチ
10:57 主稜線に出る。ザイル回収
11:03 山頂着。休憩 11:13 発
11:25 馬の背 通過
11:32 ダイレクト尾根へ入る
12:17 懸垂下降 20m
12:51 休憩 12:56 発
13:07 P500通過
13:26 P着 【記録】(杉浦茂治)