2013年6月8日奥三河/副川〜棚山高原〜瀬戸岩〜副川
棚ジャン「登攀」と瀬戸岩「観光」
<棚ジャンを登る。よく眼を凝らしていただければ、登っているのが見えます。>
<瀬戸岩に立つ。けっこう怖いところです。>
ジャンダルムin棚山 矢倉 圭子
幾つかの偽ジャンダルムに続き、今回は棚山高原のまた偽ジャンダルムへ。未だ本物のジャンダルムには行けておらず、予定もありません・・・。
このルートは東三河山ぽ会が登っているルートだということだが、はっきりとした記述がないため、尾根は断定できたが登山口などが分からず、この日の課題は、まず登山口を探すことから始まった。
副川付近に到着し、車から降りて地形を確認しながら登山口を探す。副川のバス停から南に飲み屋と工場らしき並びの横の畑に、きれいに上にあがって行けそうな道がついていた。近くの店の跡地の駐車場に止めさせてもらい出発。
ガードレールをまたぎ、畑に入っていく。
途中墓地を通り、踏み跡を辿って上がっていく。30分程歩くと、岩がゴロゴロし岩場に差しかかるが、結構険 しくここを下山路にするのは厳しい。その先には、ようやく今回メインのジャンダルム。高くそびえ立った40m?の細長い斜面に遭遇する。
所々に立ち木のある岩場。超えられるのか不安がよぎった。
登攀具を装着して、立ち木に支点を取って確保し、洞井さんがリードする。私はプルージックで、杉浦さんはロープの末端をエイトで結んで登った。延びたロープは、弱点を見極めて進み、大きな岩を巻いた所でピッチを切り、岩の角で支点を取って確保されていた。三人が揃ったところで、再び洞井さんがリード。終了点の狭い岩の隙間で、支点にかかる力の方向を変えないように洞井さんを確保する。コールがあり、岩を登り、立ち木の枝を払いながら登り詰めるとピークに到着。洞井さんにコーヒーをもらって、ようやく周りの眺望を見る余裕ができ、来てよかったと実感した。次に私が杉浦さんを確保。しかし、真っ直ぐのルートでないため抵抗が大きく、なかなかザイルが引けない。洞井さんに手伝ってもらって二人で引いて、杉浦さんも登ってきた。その先は岩のやせ尾根で両端が切れ落ちており、落ちたらヤバイ。ここも確保してもらって通過。
P477を過ぎたあとは、地図上には岩場のマークがついていない。しかしその先にも5箇所の大きな岩のピークがあり、巻いたり登ったりして進んで、主稜線らしきところに出た。地図上では車道に出るはずだと思っていたが、笹に覆われており車道ではない。
北に向かい、主稜線を探すが見つからない。あきらめて戻り、反対側に向かうと、しばらくしてしっかりとした道に出、あずまやのある広場に出た。東海自然歩道の道標があり、主稜線に出合う。
ここで休憩を取り、瀬戸岩の「観光」に向かう。
手前の岩場より瀬戸岩を眺める。お〜!と声が出るほどの切り立った大きな100m程もある岩壁。
今度はその岩壁のてっぺんへ向かう。5分程でてっぺんに到着。やはり怖くて先端までは行けませんでしたが、両手を広げ記念撮影。WEBでは、ここから懸垂下降をすると書いてあったが、いったいどこからなのか・・・。支点も無さそうで、とても恐ろしくて出来そうにない。
再び登山道に戻る。
下山路として、瀬戸岩の南西に位置する尾根を辿る予定になっていたが、早々に尾根を外してしまい、瀬戸岩の直下に出てしまった。
立ち木に掴まりながら急下降。どうにもならずザイルをフィックス。掴まりながら谷へ降りた。その後も滝を巻いたり、岩をまいたり急下降。行く手を阻まれ、立ち木に支点をとり、6mほどの滝の横の絶壁を懸垂下降する。上部が枝に覆われて、ザックが引っかかる。仕方なく上体を起こして空中懸垂のような感じで降りた。
南山などのあらかじめ支点が作られているところではない場所での懸垂はドキドキしたが、貴重な体験で楽しかった。一枚岩のナメ滝や沢を横目で見ながら下っていく。
沢筋に降り立って、右岸の踏み跡に入る。ようやく石垣で作られた廃道になった遊
歩道が見え、車道に出ることができた。
【反省】
・下山でルートを外してしまった事に関して、しっかりP687にコンパスを合わせていれば防げたかも・・・。最後までしっかりと気を抜かぬよう注意が必要だ。(以前にも、似たようなことが・・・)
・登攀中の確保で、ザイルを出しすぎでは途中で引っ掛かってしまう、また、引き過ぎでは登りにくい。適度な感じに出す難しさを教えられた。
・下山中に急斜面でザイルを出すように指示が出て、直ぐにセルフビレイを立ち木でとることが出来たが、ザイルを裁くのに手間取った。危険箇所ゆえ、すぐに出来ないと仲間を滑落させてしまう。素早く出来るようにしないといけない。
・全般的に確保中の動作が遅いと指摘を受けた。安全にはできるようになってきたが、もう一歩前進して、素早く出来るように今後は努力する。
・他いろいろ・・・。
今回も厳しいフィールドゆえに、たくさん教えていただき、たくさん反省もして、自分自身で考えることが多かった。
少しは成長できたかな〜。
どうもありがとうございました。
良い経験に 杉浦 茂治
今回は棚山高原のバリエーションルートに行きました。最近はバリエーションルートに行く事が多いような気がしますが、ちょっとは、ザイルワークが早くなったかな…?
6時半過ぎに、副川バス停付近で取り付き場所を探しバス停より南に100m行った所に、お墓へ行く道があり、ちょっと間を通り抜けて、山腹に取り付きました。
急な坂を上がり尾根伝いに行くと、意外に踏み跡があるのに驚きました。尾根も分かりやすく歩けました。しばらくすると岩場が出てきて登攀具を装着しました。そこからザイルを出して確保をしてもらいながら行きました。結構切り立ったやせ尾根で、ここが例の棚山ジャンダルムなのかと思いながら登りました。高度感は抜群でしたが…怖かった。そこを3ピッチで登り、P477に着いたのが9時頃でした。今回は岩の間、木の間などの障害物が多いように感じ、声の通りも悪く感じました。高原の直下でも以外に岩が出ていて手掛り、足掛りは沢山あり登り易かったです。そして登って行くにつれ空が見え初めて来ると、やっと登山道らしき所に出ました。10時半頃でした。地図で確認すると実線なので、車道だと思っていたのですが、出たのが獣道かなと思う程度の道でした。確認の為に本来の逆にあるP752の場所を確認しようとしたが、出来ずに引き返す事に、登ってきた所を越してさらに行くと、出ました!
「東海自然歩道」の看板です。
近くの東屋で休憩をして、11時半に出発をし、瀬戸岩を目指しました。
なんでも100mの懸垂下降をした方がいるという話を聞いていましたが、実際に見ると本当の崖で、足がすくみ立てませんでした。上部には、錆びたリングがあり昔はここで登ったり降りたりしていたのでしょうが、自分は出来ないだろうと思いました。
P687尾根を目指し東海自然歩道を歩きました。瀬戸岩から1つ隣の尾根なので、これだと進んで行った尾根がだんだん無くなってきて、気が付いたら瀬戸岩の直下に来ていました。もっとコンパスを見たり、P687を確認して尾根に入った方が良かったのかなと思いました。思っていた尾根を外し北に行ってしまい、瀬戸岩に戻った感じになったようです。そのまま沢伝いに降ることになりました。沢はあまり人が入った形跡が無く荒れていました。土が滑り、浮き石もあるため足の置き場に気を配って慎重に降りました。1時間過ぎた頃に『懸垂で降りるか!』の言葉が出たときは、自分の中でかなり緊張しました。6m程ですが、ザイルのセットの仕方、落とす方向、落とし方など色々と見れて勉強になりました。やはり懸垂下降は緊張します。
14時頃にやっと歩道に出ました。今回はとても実践的で面白かったです。もっと経験をして行動を早く、良い判断が出来るようにして安全第一で行きたいと思います。
まだまだ修行が… 洞井 孝雄
「にせジャンばっかり。本物のジャンダルムは登ったことがないのに・・・。OさんからはB級の山ばっかり登ってるね、って言われてるし・・・」」
穂高岳のジャンダルムに形が似ているというので、そう呼ばれているらしい岩峰があちこちにあって、どこかから探してきては登りたいと言ってくる矢倉がぼやく。
鈴鹿のクラシ谷にある「クラジャン」、秩父の両神山を登った時に「クラジャンそっくりじゃねえか」と笑いながら登った「大ナゲシ」、それに今回の「棚山ジャンダルム」…。
「にせジャンシリーズでいくか、これから・・・。冬は皮ジャン、韓国にはコチジャンというのもあるしな・・・」
最初に、この山の話を聞いたとき、「へえ、そんなのがあるのか。初耳だな」というのが率直な反応だった。WEBで「棚山ジャンダルム」で、検索したらヒットしたのは1件。大まかな記述しかないので、地図上で、それがどのあたりに位置しているかを類推するしかない。ありがたかったのは数葉の写真がアップされていて、尾根や棚ジャンの雰囲気がよくわかったこと。見た限り、クラジャンや大ナゲシよりはちょっとホネがありそうであった。
かくして副川から棚山高原に突き上げている尾根を登り、棚山高原から東海自然歩道に出、瀬戸岩を回って再び自然歩道に戻って南西に派生する尾根を下降し、副川に戻ってくるという計画が立てられた。
メンバーは矢倉圭子、杉浦茂治、それに私の三人。6月8日5時出発。豊川ICから設楽へ入り、ぶっぽうウォールを左に望みながら県道を走って副川に出る。道路脇に車を止め、地図と尾根を見比べながら、取り付きを探し、道路脇の茶畑の間から墓地に上がり、樹間を縫うようにして急な山腹の踏み跡を登っていく。樹下の山腹を登り切って、岩の露出し始めた尾根をたどることになる。やがて、目の前に岩尾根が現れる。新緑でおおわれているが、間を透かして岩が見える。写真で紹介されていた「ジャンダルム」そのままの形だ。例によって、私がロープを伸ばし、矢倉がプルージック、末端を杉浦がつけて、私の確保で上がってくるという手順。尾根からところどころに根を張っている灌木の間を縫って、岩の斜面を登っていく。ホールドが大きく、フリクションもよく利いているが、灌木が腐っていて折れやすかったり、足下が切れ落ちて、おまけに手掛かりに乏しい数メートルがあったり、と、少々スリリングな部分もあって、なかなか楽しませてくれる。
ロープがまっすぐに伸ばせないので、あちこちの角で摩擦がかかって、上に行くほど、重くなって流れなくなる。体を持ち上げようとすると、逆に下に引っ張られて落ちそうになる。微妙なところでは一苦労である。
いったん上部の岩を登り切った地点でピッチを切り、後ろを引き上げる。三人がそろったところで、二人に確保を頼んで、先に進み、三ピッチで、核心部は終了。これから先は、大小の岩のピークと灌木の尾根が続き、1時間ほどでP477、さらに1時間弱で尾根を登り切って登山道と合流した。登山道は平たんなササ原の中の踏み分け道で、地図上では棚山高原まで上がってきている車道が付近にあるはずだ、と見当を付け、北に向かってしばらくササを分けたが、途中で違う方向へ下っていたので、再び元の合流点に戻り、今度は反対側に向かった。10分ほどもササの中を歩くと、明瞭な登山道に合流した。そのまま道をたどると、棚山高原の標識とあずまや、脇まで轍のついた道が上ってきている広場に出た。
休憩後、東海自然歩道の標識に導かれて、「瀬戸岩」へ向かう。せいぜい道の真ん中に大きな岩が横たわっているくらいだろう、などと高を括っていたのだけれど、そんな小さなスケールではなかった。100m近い断崖が足下から谷底に切れて落ちているのだ。岩の頭に立つのにも若干度胸が要る。あわよくば、WEB上に書かれていたように、瀬戸岩を下降するのもおもしろかろう、ということで、60mロープを二本持参してきたのだったが、じっくりと下降地点を探して…などとやっている余裕はない。第一、切り立った岩のスケールを見た途端、ここをアプザイレンしようなんて気は失せてしまっている。
引き返して再び東海自然歩道に戻り、もう一つの予定通り、南西側に延びている尾根を下り始めた。地形図を見ると、顕著に下っている明瞭な尾根のはずだが、下り始めてしばらく、尾根筋を伝っているうちに、北に振りすぎたらしい。瀬戸岩の真下の沢の左岸に出てしまった。登り返すには足場が急で脆いので、そのまま沢筋に沿って下降することにした。沢筋の岩は不安定なので、右岸の灌木帯に入るが、落ち葉に埋まった岩もごろごろしていて歩きにくい。
1時間ほど右岸左岸と渡り返し、小さく巻きながら下ったが、ひとつの滝の上で左右どちらもちょっとしょっぱい部分に出た。立ち木にロープをセットして懸垂下降で下る。せいぜい5、6mの高さだが、下って沢に降り立つと、川床そのものが一枚岩の棚状になった部分であることがわかった。うーむ、でかいな。このあたりの岩の組成、形状はけっこう特異でスケールが大きい。
ロープを巻いて、左岸の国有林の中につけられた踏み跡に入り、荒れた登山道に合流した。15分ほどで、ぶっぽうウォールが正面に見える登山口に出た。
駐車場まで日差しの強い、頻繁に車が行き来する車道を歩いた。途中の神社で作業している男性に「こんにちは」とあいさつしたら、ヘルメットにゼルプスト姿の私たちを見て、「棚山かい?」と聞いてきた。こういう格好の登山者はこの辺りでは珍しくないらしい。車に戻ったのは午後2時半近くだった。
少ない情報を頼りに、地図をにらみながら道を探し、下降ルートを設定して降りてくる、という山登りは、なかなか面白いが、地図を読み違えたり、ちょっと引き返しにくい場所へ出たりすると、面白いとは言っていられなくなる。
今回は、沢筋を下っても、ロープも登攀具も揃っていて、面白がって行動ができたが、尾根筋を読み違えてしまい、当初の予定通りの尾根を下れなかったのは、ちょっと悔しい。
勝負に勝って試合に負けた、というところか。
まだまだ修行が足りないなぁ、オレも。
【記録】
2013年6月8日
05:00 洞井さん宅 出発
06:40 副川付近着。登山口を探す
07:00 登山口発
07:35 休憩 07:42出発
07:49 休憩 登攀具装着 07:57出発
09:05 P477
09:15 ザイルをフィックスし岩場を通過
09:32 P477東コル
09:50 休憩 09:57出発
10:34 棚山高原 主稜線手前 着、棚山高原P752に向かう
10:52 P752が分からず戻る
11:02 上りの分岐
11:19 東海自然歩道 あずまやで休憩
11:31 出発
11:34 瀬戸岩 分岐
11:36 手前の岩場より瀬戸岩を眺める
11:40 瀬戸岩
11:52 主稜線よりP687の尾根を下る、西に振りすぎ尾根を外す
12:30 ザイルをフィックスして通過し谷へ降りる
13:17 休憩 13:22出発
13:30 懸垂下降(6m)
13:52 石垣の歩道に出る
14:09 車道 着
14:28 駐車場 着 (矢倉圭子)