期日:2013・7・31〜8・11
目的:シャモニー周辺でのクライミング
メンバー: 新海時生
(クライミングは現地ガイド同行)
(旅行・宿泊は妻同行)
記録:
〈7月31日〉
10:30 中部空港 発
20:00 ヘルシンキ(フィンランド)
25:00 ジュネーブ(スイス)
(現地時間18:00)
現地時間20:00 シャモニー 着
現地エージェント神田さん(旦那はシャモニー40年の山男。スポーツ店勤務の他ガイドなどし、奥さんは旅行代理店の様な事をしている)の送迎にて夫妻所有の山荘(ペンションの様なもの)へ到着。まわりは割と開けた山間部。広いテント場なども有り、町から東へ3kmほど。隣のプラと言う駅から徒歩5分。
いきなり同宿の人(当夜は2名)と一緒に夕食。宿の前には鋭鋒ドリュがそびえ、夕日に赤く染まって美しい。部屋は10畳ほどのワンルームにベッドが2つ。バス・トイレなど共同。
〈8月1日〉
天気いいが、予定通り1日フリー。
2人でシャモニーの町まで森の中をブラブラと散歩。街中のメインストリートは去年のツェルマットに似た感じ。町自体はもう少し大きく、にぎやか。夕方バスで帰るが、9時過ぎまで明るいので時間たっぷり。読書などベランダでごろごろ。
〈8月2日〉
朝食後、9:00ガイドのジジさんに会う。神田さん一押しというイタリア人。40代。去年と真逆、小柄で優しそうな人だ。英語は少々。こちらはもっと少々。
今日は近くの赤い針峰へ行くことになる。
近くのロープウェーでフレジェールへ1本。椅子リフトでもう1本上がると廻りは岩山ばかり。たくさんの人が取り付いている。
10:30クライミング開始。「グラングロリア」という右の方の岩。
13:20頂上 計8ピッチ。そう難しくは無かったが、靴以外荷物をみな下に置いてきてしまったので、途中のどが渇き きつかった。
シャモニー谷を隔てて目の前にアルプスの山々がずらりと並ぶ。まるで展望台の様。ドリュ、グランドジョラス、ミディ、モンブラン・・・。モンブランはひときわ大きく、白いが丸い。ドリュ他針山もたくさんそそり立ち、わくわくする。
靴はきかえ、クライムダウンの後、朝のロープウェーにて山荘に帰る。(3時頃)
夜、苦手なチーズフォンデュを始めて食べる。う〜ん・・・?
〈8月3日〉
朝食後、出かけに雨がパラパラ降り出す。
7時頃シャモニーのロープウェー乗り場でジジさんと落ち合うが天気悪いからミディ南壁は無理ということで、明日の予定だった高度順応を兼ねた氷河歩きとなる。1000mのシャモニーから一気に3800m超のミディまで上がる。いきなり震える雪の世界だ。そこから4人乗り、3連のかわいいテレキャビンにてイタリアのエルブロンネへ移動。モンブランと周辺のパノラマゴンドラだ。天気は良くなり陽も差しているが風は強い。
ハーネス・アイゼンなど装備し、コンテ(10mくらいのロングコンテ)で歩き始める。バレーブランシュ氷河のただなかを前半はモンブランの裾をトラバース。
後はミディに向かって登っていく。ちょうど正面に南壁が赤くそそり立っている。
風が強く、取り付いている人は見えないが大迫力。藤内の一壁を何倍か拡大して色塗った様な壁だ。ドキドキする。
ミディの展望台までもどり(最後バテバテ)ロープウェーにて降りる。
〈8月4日〉
朝、また雨降り出す。昨日より本降り。
ミディはやっぱり無理で、他の岩にしようということになる。ジジさん運転の車で1時間以上西の山間部へ走るとグランボルナンというスキーリゾートの様な所を通りまもなく「コロンビアル」という岩山。周りは牧草地(アルプ)が延々と広がる。ツールドモンブランのルート上らしくサイクラーがやたらと走っている。9時に取り付き。天気は良くなり、前後に現地(たぶん)の若い男女3パーティ。他にも2〜3Pa見るが、女の子たちはほとんどがショートパンツにタンクトップといういでたちだ。日本の山ガール達も見習ってほしいものです。(夏にあの暑苦しいかっこうは止めてくれ!)その中でジャポネのおっちゃんは2ピッチ目の出だしに苦しんだあげく、ヌンチャクかけてAOし、「Oh~~」と声を揃えられてしまった。悲しい!
12:15 7ピッチ終了。頂上。
周りの景観も抜群で、いかにもアルプスでクライミングしてる感いっぱい。気持ち良さではこれまでのベストクライミングだった。最高!
上から懸垂下降5Pほど繰り返し、取り付きに戻る。やりかたは日本と同じ(皆、前でしているが)。違うのは確保も懸垂もみんな素手。誰も手袋など持っていない。
服にしても手にしても、アチラの人達は皆とても丈夫らしい・・?
3時頃 山荘にもどり、通訳してもらってジジさんと話をする。明日から二日間のモンブラン山行を(山小屋予約も)キャンセルし、クライミングに変更して、ミディ南壁へどうしても行きたいとお願いし、了承してもらう。スッキリ。
宿の外にある露天風呂(ジャグジー)に入り、体もスッキリ、快適。
〈8月5日〉
朝早い時はバナナですませていたが、今日は大変だからと気合入れてラーメン作って食べていく。いよいよ南壁です。
一昨日同様ミディ頂上までロープウェーで上がり、雪のリッジをコンテで下っていく。8:20南壁取り付き。壁の右端から岩1つ乗っ越し(確保付き)、装備整える。小さなザック1つだけで、靴など皆置いていく。
9:10 1P終了、クラック沿いの「いきなりこれか!」という登り。難しい上にもう息上がる。
10:30 4P終了、ほぼクラックルートだが手足突っ込んだりするよりバランスやレイバックなど力使う所が多い。前後にも他パーティつまっており、終了点はどこも立っているのがやっと。ザイルさばくのに必死。他は若い男性パーティばかりで、皆うまい上にとても親切。助けてもらったりしている。
12:00 7P終了
これより上、頂上に抜けるのはもう1Pルートと3Pルートがあるが、ぼくらは荷物置いてきたのでここで終了。懸垂で降りる。後半は慣れてきたせいか(開き直った感じ)、割と落ち着いて楽しめました。途中プロテクションのカムが抜けなかった所はあせって冷や汗かきましたが、「もういいから登ってこい(たぶん)」と言われた瞬間に抜け、うれしかったです。
予想以上に難しいクライミングでした。ジジさんが連れていくのを渋っていた(ように見えた)訳がよくわかりました。
日本で増井さんが「一壁の4ルートを登りこんでおけ」と言っていたわけも今さら分かりました(結局それ以来一度もやっていません)。結果オーライとは言え、とてもうれしい。満足感いっぱいです。
13:20 取り付きまで戻る
ルートが全体に左上しているので、懸垂で下るのも結構難しく、大変だった。
14:40 ミディ展望台
今日も登り返しはバテてヘロヘロ。ジジさんにロープ引っ張られながら登る。
ミディにはいろんな施設も多く、観光客も一杯だが今日も装備解いて通過するだけ。すぐに降りる。
15:30 ジジさんに送ってもらい、山荘に戻る。疲れてヨレヨレ。昼寝でもしようと思ったが、興奮しているのか眠れないのでベランダで本など読み過ごす。
〈8月6日〉
今日は軽めにしておいてくれと頼んでおいたので、初日と同じ、赤い針峰群になる。9:00取り付き。 もう少し右の「ロビンウッド」と言う岩らしい。
10:40 5P終了 頂上。初日より少し厳しいルートだったが、短いし快適に登る。下った後「もう1本するか?」と聞かれるが、いい所で終わろうとフィニッシュとする。リフトで1本下り、フレジェールのロープウェー乗り場より
「歩いて下ってもいいか」と言うと、「一緒に行こう」というので町まで歩いたのだが、ジジさん走るように下っていき、暑いし大汗かいてしまった。日本程ではないにせよ、ジジさんも「HOT !」を連発していた。1:30宿の前でジジさんとお別れ(契約が今日まで)。また来年一緒にやれるといいなぁ。駅前でビールなど飲み、時間つぶして3時頃帰る。
〈8月7日〉
朝から雨。結局1日中降る。シャモニーの町に出てブラブラし、神田さんの店(割と大きなスポーツ店)でザイル2本、アイゼン、アイススクリューなど買い出し。午後ホテルのスパにてオイルマッサージを受け、5日間の疲れを少し癒す。
〈8月8日〉
今日も雨降ったり止んだり。午前中は近くをトレッキング(散歩?)。午後は
宿で本読んだりしてゴロゴロと過ごす。
〈8月9日〉
シャモニー最終日。予報は良かったので山へトレックの予定していたが、雲低く晴れない。町まで別ルートでブラブラ歩き、土産買ったりランチしたりした後電車に乗って宿に帰る。3時頃より車で送ってもらいジュネーブへ移動。途中国境にて購入山用品の免税手続きをする。駅前のホテルにチェックイン後、ジュネーブの街歩きなどする。
〈8月10日〉
朝食後、電車で空港へ移動。10時半頃の飛行機にてヘルシンキへ。乗り換えて日本へ最後のフライト。
〈8月11日〉
朝9時頃、中部空港到着。天国の様なシャモニーから酷暑の日本へ着くと、荷物も嫌がったのか、ジュネーブで預けた僕のザック(山用品など1式入り)が出てこず、大騒ぎ。明日から剣山行なのにどうするの・・・?
以降顛末は剣山行にて・・・。(新海)
ミディ南壁
去年に続いてのヨーロッパ。今年はモンブランの麓、シャモニーです。去年はマッターホルンに登りたくて行ったのですが、モンブランに登りたかったわけでは無く(4800mヨーロッパ最高峰ですがこの高度に興味はありません)、思い立ったのは、去年から藤内小屋の前の掲示板に張られていた1枚の写真からです。ガイドの増井さんの写真で、赤い岩壁が写っています。聞くと「ミディの南壁」と言う事でシャモニーにあると言います。何度か見るうちに気持ちがつのり「僕にも登れるのか」という問いになかなか答えてはくれなかったのですが、今年「新海さんより登れない人を連れて登った事がある・・」というほとんどつぶやきに近い言葉を勝手にO・Kと判断し、渡欧の手続きに入りました。現地に10日間程もいますから、モンブランも登りたくなるかもしれないと、一応計画書には入れておいたのですが結局 天気などの都合でキャンセルし、ミディを優先しました。始めのうち、ちょっと渋り気味だった現地のガイドもその意欲を買ってくれたらしく、4日目にやっと行けました。快晴、無風の最高のコンデションでしたが、予想よりずっと厳しく、スリリングでエキサイティングなクライミングでした。しかし今年半年かけたベストなクライミングが出来たと思っています。他の岩場も含め、最高に楽しいアルプスクライミングとなりました。また来年行けたらいい。