鈴鹿 御在所岳3ルンゼ(1,212m)

     冬合宿最終トレーニング





<三ルンゼ。滝の直下のトラバース>

 

2013.12.22 三ルンゼを登る

雪への対処と行動技術          洞井 孝雄

 合宿前の最後のトレーニング山行で、鈴鹿・御在所岳の三ルンゼに入った。

メンバーは板津、良I、孝K、聖S、洋S征W、東洋K、裕T、それに私の9名。

 長島を過ぎたあたりからぱらつき始めた雨が、菰野町に入ると雪に変わった。湯の山の温泉街から一の谷へ登っていく道はうっすらと白くなって、スタッドレスのタイヤでも滑ったのには驚いた。駐車場に着いて、後続のもう一台を待つ。やっとのことで上がって来た車から降りて来たIが寄ってきて言う。「降ります。帰りはとても下れそうにないので…」後続の車は4駆だがノーマルのタイヤだった。おいおい、この時期の鈴鹿だぞ。どんな車の手配をしたんだ。雪は想定してなかったのか。

 二台一緒に下へ降りて、私たちの乗って来た車にもう一度上がってきてもらうようにする。駐車場に残った私たちは出発の準備をする。

「ザイルを持って来ているのは…」

「K君です」

「あれっ? ザイル一本だけか?」

「はじめ12人だったときは二パーティーで二本挙げてたんですが、9人になったので、削りました」

「あのなぁ、10人でパーティーひとつのときにリーダーとサブリーダーは一人ずつ、それを二つにわけると5人でもリーダーとサブリーダーは一人ずつ要るよな、でも、ザイルは二つのパーティーなら二本で、一つのパーティーになったから一本でいいという計算にはならない。この時期の三ルンゼに入るのに、9人でザイル一本ってのは、やっぱり駄目だな。まぁ、最終的には、有無は確認したけど本数まで見なかった俺のチェック・ミスなんだけどな」

 この時期に三ルンゼに入るのに、9人のパーティーでザイル一本では行動が大きく制限される。どんな状況も想像しておかなければならない。

 車を置いて、下から二人が上がってきた。準備ができたら出発である。うっすらと雪の乗ったスカイラインから裏道を登り始める。沢沿いに堰堤を越えて四の渡しから藤内小屋へ。一息入れて兎の耳から藤内沢の出合へ。昨日一昨日に降った雪だろうか、出合の岩はほとんど雪に隠れている。今日は時間がかかりそうだ。右岸から上がっていこうと思ったのだが、半端な雪の付き方なので、無雪期と同じように左岸から大岩の下をトラバースして右岸からテスト岩の脇まであがった。雪は膝を越えるくらいまで。登攀具とアイゼンをつける。一壁ルンゼに上がり、左岸から樹林の中を登る。この辺りまでは、岩の上に乗ると、雪が浅く、アイゼンの爪がガリガリと音を立てるだけで、なかなかホールドをとらえきれずに不安定な登りだ。最初のクラックの手前でザイルを出し、プルージックで登ることを指示してクラックを越えると、いつもなら山腹にしっかりと踏み跡があるのに、この日は雪の斜面が右手の谷側に急な角度で落ちているだけだった。立木や雪面からほんの少し頭を出しているササを見て、見当をつけながら一歩一歩斜面を探るようにして踏み出し、膝上まで潜る雪の上にルートをつけていく。立ち木に末端を固定し、メンバーに登ってくるようにコールする。全員が登って来たところで、ザイルをたぐり、ルートを伸ばす。山腹から沢筋と出合う手前で樹林の中の急斜面を左上し、ザイルが伸びきったところでピッチを切る。樹林に入る部分も、べっとりと雪が付いて、よく見ないと見落としてしまいそうだった。メンバー全員が登って来て、今度は末尾のIが先頭で滝の手前のコルまでザイルを伸ばす。メンバーは、これまでとは逆に、後ろから順にプルージックで上がっていく。一本のザイルで早く行動する効率を考えると、この部分はこうするしかない。コルの上からは滝の下部に下り、ルンゼの登り口までのトラバースになる。雪のないときは、立木につかまって滝の下部に下り、そこから続く緩やかな傾斜の岩の棚を進んでいくのだが、今日はコルから滝の下まで急な雪の斜面、滝も上部からほとんど雪に埋まって、棚上の部分も雪壁のようになって数十メートル下の沢筋に落ち込んでいる。雪は腰の上まで。コルでIに確保を頼んで、多岐の下部に下り、多岐の基部を一歩一歩足跡を刻んでいく。50メートル足らずの距離だが、雪が重く、けっこう厳しかった。トラバースに続くルンゼの登り口でピッチを切り、メンバーに続くように合図する。いったんトレールがつけばそれほど困難なところではない。固定ザイルにプルージックをかけ、仲間たちは平気で通過してくる。ここからのルンゼはいつもなら砂礫と崩壊直前の花崗岩の溝の中の登りだが、今日ばかりは雪で埋まって、アイゼンを頼りに真っ白な雪の溝の中を登ることになる。いったんザイルを伸ばし始めると、途中で切る場所がないので、辛いが休まず登りきるしかない。やっとのことで登り切って、メンバーを上げる。ラストのIがザイルを伸ばしてそのまま沢筋に下り、雪に埋められた岩の間を登っていく。突然、雪質が変わって、霰のような層が現れる。足を踏み出す傍からさらさらと崩れて固まらず、体を持ち上げるのに一苦労である。ここでザイルを外して、メンバーみんなで交代しながらラッセルを繰り返す。ノコギリ岩までの最後の数百メートルのラッセルもなかなか厳しい。風が強くなり、舞っていた雪が強くなりはじめた。ノコギリ岩の基部に上がってそのまま左へトラバースし、右岸を登って終了点へ向かう。足がずっしりと重くなりはじめる。仲間たちと少々、間が開く。遊歩道に上がったところで一緒になり、中道を下る。この時点で気温はマイナス4℃。時刻は13時を回っている。中道にもけっこう雪が積もっている。樹林帯に入って、風のないところで休憩をとった。気温はマイナス1℃。この日は、行動し始めてから、何も腹に入れていない。メンバーから差し出されたロールケーキがうまかった。キレットを過ぎ、裏道への分岐の手前に差し掛かる辺りからは雪がやみ、陽光とともに下界の景色が明るく広がって視界に飛び込んできた。上の雪の世界が嘘のようである。少し気温も上がって、アイゼンがダンゴになり始める。アンチスノウプレートのついていない私のアイゼンには雪がついて、まるで花魁の下駄のようになってしまって、とても歩けない。アイゼンを外し、手に持って歩き始めると、登山口はもう目と鼻の先であった。駐車場着14時。

下に置いた車のメンバーを先に車に乗せ、送っていった車に乗るはずの私たちは湯の山温泉に向かって歩きはじめた。

「しかし、奴ら、一言もあいさつなかったよな。配車した奴も、ノーマルタイヤの車出した奴も、それに乗ってきた連中も。いくら、こちらが先に乗って下りろ、って言ったとしても。“お先に”とか“すみませんね”とか…」

「そういえばそうですね。でも、職場でもそんなこと慣れっこですよ」

「あ、そうなんだ。そんな気配りとか、そういう考え方しないんだね。時代かねぇ」

本番よりも本番らしいトレーニングだったような気がする。

 

トレーニングではなく雪山本番の三ルンゼ!

                               板津 彰伸

冬合宿直前トレーニングとして御在所の本谷にメンバー9名に行ってきました。3週間前の三ルンゼとは大違いで踏み後も無い本谷、三ルンゼは大雪でルートファインデイングやラッセルで大変だった。事前に天気予報を確認していたので心配していなかったが大間違いで風が強くなったり吹雪いたりしていた。

本谷に入ってからは、後ろから1名が私達の足後をたどって登ってくることが気になり声をかけ一般ルートに戻るように注意した。本谷からはすぐにトレーニングから真剣モードになった。

・あられが降り始め荒天候を予測

・踏み跡が無くラッセルが大変だろう!

・雪の深さが40cm近くあり想像以上

・参加メンバーが多くザイル確保が大変

(本谷が初めてのメンバーも参加)

結局は、三ルンゼまででもザイル確保は真剣でやったし、それ以後の登りでも固まらない雪と深いラッセルで大変で途中の樹氷も岩場のアイスの美しさも見ることも無く全員が休憩も無く登りきることになった。

こんな雪山もあることを全員が体験した事や実践でのザイルワークの必用性も学んだことだろう。リーダーがどのように考えてザイルを張り、メンバーが何をすべきかを理解して行動出来れば、もっと早く対応出来たと思う。

雪山を楽しく体験することも必要だがもっと実践での技術の習得や仲間意識を高める必要もありそうだ。私の役割はそこにありそうだ。

 

最適な条件?                 良I

雪の付き方が微妙だったり、ラッセルを強いられたり、強風にたたかれたり、12月の鈴鹿としてはこれ以上望めないほどの好条件下だったと思う。またトレーニング山行の期間中、なかなか多くのメンバーが揃うことがなかったが、最後に多くのメンバーでトレーニングができたことも、よかったと思う。あとは本番のみ。後悔することのない合宿にしたいと思います。

 

最終トレ                               孝K

今回の合宿最終トレーニングは再度三ルンゼでの岩場歩きと団体行動。月初めに来た三ルンゼと異なり登山口のアプローチの道路からアイスバーン。一の谷の駐車場までの登りはなんとか登れたが帰りが不安ということで下の片岡温泉の駐車場に駐車。本当はもっと上のバス停で良かったとのこと。この辺の知識も登山力量の一環か。山は先週のアイゼントレが役に立ち岩場などアイゼンの前爪で登ることが出来た。三ルンゼの上部はトレースなしのラッセル。パウダー上なのでさらさらで登りにくい。ほとんどのメンバーが揃ったこともありザイルワーク、団体行動含めていい練習になりました。

 

初めての三ルンゼ!            裕T

 湯の山を越えると、そこは雪国。一ノ谷駐車場までの坂道に積もった雪は滑りやすい。天気予報はそれほど悪くなく、平野部は晴れていたのだが、冬型で北風が強いため、鈴鹿山脈には雲がかかり粉雪が舞っている。初めての三ルンゼはトレースがなく、さらさらの雪のラッセルは大変でした。頂上につくと晴れ間が現れ、綺麗な樹氷を見ることが出来ました。ただ、風が強いため早々に下山。冬合宿に向け、良いトレーニングが出来たのと、鈴鹿の新たな楽しみがまた一つ増えたのと、収穫の多い山行でした。

 

雪の3ルンゼ                           洋S

冬合宿のトレーニングで御在所3ルンゼへ行って来ました。昨冬の合宿トレーニング以来1年ぶり2回目です。冬型の気圧配置のため風は相当強いだろうと思っていましたが、風ばかりでなく降雪・積雪もありまさに冬山の状況でした。アイゼン、プルージック、ラッセルと良いトレーニングができました。また、冬山の怖さ、漕いでも漕いでも進まないラッセル・足場の効かないさらさらと崩れる雪・寒さで感覚のない手指先など、認識させられました。

トレーニングで疲れ気味の体をゆっくりと休めて合宿を迎えたいと思います。

 

仮想八ヶ岳                   聖S

 朝から雨が・・・と思っていたら、湯ノ山温泉街に入ると、道路に雪が前日降ったようで、御在所もすっかり雪景色でした。準備をして、スカイラインを下って裏道へ。薄っすら雪が残る道を登ります。藤内小屋で休憩をして、藤内壁出会いから、3ルンゼ方面へ。ここで、アイゼン、ハーネス等を着けていざ出発。雪道の為、気が引き締まります。見え隠れする岩にアイゼンを取られないように、また、岩を登るときは、前日のアイゼントレを思い出しながら・・・と思いながら、南山と違い、岩肌が見えないので、上手く乗れず、ずり落ちる場面も・・・・途中からは、雪と風も強くなり、“これで気温がもっと低かったら、八ヶ岳だよね”といいながら進みます。3ルンゼでは、他に入ってる人がいない為、ラッセル!!不思議な事に、場所によって雪質が異なり、簡単に足場が作れるところもあれば、全く足場が作れないところも・・・面白いなと思いつつも、まさか、御在所でこの時期にラッセルする事になるとは・・・・ヘトヘトになりながら、登りきると、一面樹氷の世界。頑張ったご褒美ですね。

 下りは、中道を。登りの疲れもありますが、岩肌の見える雪道のアイゼン歩行にまだまだ慣れず、どんどん前に離されます。でも、慌てるとアイゼンをひっかけそうで、結局、慎重に。合宿までに、もう少しアイゼンに慣れたいなと思いましたが、今回で、トレーニング山行は終了。後は、本番を残すのみ。さて、本場でトレーニング山行の成果が出せるでしょうか。

 

雪の三ルンゼ                東洋K

 今回の冬合宿トレーニングでは2度目の三ルンゼ、前回はアイゼンは着けたものの雪はなく上の方で氷があった程度。今回は登山口に着く前から雪が積もり途中から少し吹雪にもあうコンディションでした。序盤から岩場歩きが続きピッケルを使い進み、三ルンゼの手前からはアイゼン・ハーネス・ヘルメットを着用。ここからはプルージックで確保しながら登りましたが三ルンゼは今月2度目とあって以前に比べると苦戦せずに登ることができました。

 ただ今までの印象と違うのは雪が多かったことです。以前は氷と岩の世界という印象でしたが今回は雪があったせいか階段状に歩くことができました(先頭を進むLの洞井さんは大変だったと思います)。同じルートでも雪のある無しでこんなにも印象が違うものかと思い知りました。特にその先ではラッセルが必要な深い雪で、まったく締っていない雪をかき分けていかなければない程です。

 今回は計画段階から共同装備の件などで失敗があり反省が多い山行ではありましたが、いいトレーニングになりました。何事もなく無事に帰宅できたことで次につなげていきたいと思います。

 

初めて行き、雪の三ルンゼ      征W

 冬合宿最終トレーニングは鈴鹿の3ルンゼでした。3ルンゼ、3ルンゼという言葉はよく聞いたことがありますが、これまでに一度も行ったことなく、合宿の最終トレーニングで初めて行く場所でした。ネットで見たりして、すごく大変なところだと思っていました。

 そして、当日を迎えたら、近づくにつれ天候が悪くなり、駐車場は雪で真っ白になっていました。岩場の雪も初めてのことでアイゼンで立てるかどうかさえも心配でした。みなさんから、いろいろと声をかけて頂き、教えて頂き、何とか登ることは出来ました。アイゼンで岩に立つのも登るのも初めてで、雪がサラサラでラッセルしても出来ていない状態でした。全くの初心者どころか、サラサラの雪の中で溺れているような感じでした。

 

12月22日(日)雪後晴れ

山行目的:冬装備で岩場を歩きザイル ワークを学ぶ

≪メンバー≫ L:洞井 SL:板津 他7名

≪記 録≫

 6:42 駐車場に到着 雪が降っているので車両を1台 安全のことを考えて下の駐
      車場に回送

 7:30 駐車場を出発(裏道)
 8:07 藤内小屋
 9:12 テスト岩の脇ゼルプスト等を装着 点検
10:30 3ルンゼ
12:35 中道より下山
14:30 スカイラインに出る
14:50 駐車場