2014.8.12夜〜16 北ア・剣岳八ツ峰上半部縦走

天気を縫って岩稜を攀じる。    

洞井 孝雄

  

<剣岳 山頂>

8月12日(火)夜から15日(金)の日程で剣岳に登った。計画は、12日に立山に入り、翌13日、室堂から剣沢に入って幕営。14日は早朝から剣沢を下り、長次郎谷を登って八ツ峰の上半部を縦走して剣岳頂上に立ち、別山尾根を下山、15日に立山に下山。メンバーはあつた労山の清水美帆と多賀寿江、そして私の三名。一人は登山学校AC、もう一人は元スタッフである。13日は晴れ、14日は曇り、たまに小雨、ガス、15日は強風と横殴りの雨、という天候だったが、初日は剣岳の全容を一日中見ることが出来たし、二日目は午前中は曇り、午後からは濃いガスの中だったが、雨はたまにパラリ、とくる程度で、ほとんど降られることなく八ツ峰の縦走を終えた。最終日は風雨の中の下山となった。

<剣岳 全景>

8月13日(水)

12日夜集合出発。1時過ぎ、立山駅前のⓅに着。かろうじて空いていた駐車スペースに車を入れ、仮眠。

 6時30分発のケーブルカーに乗車。美女平でバスに乗り替え。水を汲んで室堂を出発。途中、ミクリが池温泉で、雷鳥平でアルバイトをしているという昨年の県連一般講座の受講生と落ちあい、名物だというチーズケーキをつつきながら一休み。

雷鳥沢、剣御前を越えて剣沢まで約3時間半。少々暑かったが、お花は満開、青い空と剣沢までの行程なので、のんびりゆっくりと歩を運んだ。設営後、剣沢小屋を越えて雪渓の手前まで偵察。

 

8月14日(木)

 2時起床。薄く雲がかかっているが、月の光が明るい。3時発の予定が20分ほど遅れた。剣沢小屋を過ぎて剣沢に降りる手前で雨が降り始めた。一旦はBCに戻りかけたが、すぐに雨は止んだ。剣沢雪渓に降り、アイゼンをつけて歩き始める。

 空は明るくなって、雲の流れは速いがなんとか持ちそう。長次郎谷出合から谷は大きく左にカーブして、傾斜がきつくなり始める。

熊の岩の基部から右手の急なブッシュと岩交じりの踏み跡に移る。この登りも厳しい。

 XYのコルから池の谷側寄りのガリーからY峰に取り付き、右に回り込み、左上にガリー状を登って小さなコルで切る。右上に10mほどのガリー。岩が外傾していて、少し高度感がある。ハイマツの枝をつかむとズルリと枝が伸びて、うっかり体重をかけたらとんでもないことになるところだった。登り切って稜線上を進み、Y峰の手前のピーク(Dフェースの頭か)に出る。その先にY峰のピーク。

Y峰のピークから短い懸垂下降をすると、右手にトラバースの踏み跡があるが、尾根通しに岩の上をたどって懸垂下降。残置ポイントが上下に二か所、数メートル下って下の方のポイントで懸垂。

<懸垂下降>

池の谷側から回り込むようにしてZ峰へ登り、Z峰のピークから下って[峰へ登る。Z峰の下降点に残置のロープが垂れており、数メートル岩を下って、キレットをまたぎ、さらにギャップに続く。ギャップから、壁に刻まれた階段のようなバンドを右上し、左上に登り返す。[峰の稜線上を進むとまた、懸垂のポイントがある。この頃から、深いガスが巻いて、周囲の景色が見えなくなり、ルートもわかりづらくなった。残置の下降ポイント。二本つなぎのロープで下降。傾斜はそれほどきつくはないが、30メートルほど下ると、崩壊した岩と赤土交じりのガレ場に出た。左手の岩壁に古い残置の懸垂ポイントがあり、10メートルほど下の踏み跡から左に回り込むようにして踏み跡が続いており、急な岩稜を登りきると八ツ峰の頭である。 

平たんな赤土のピークで一息。丈の低いハイマツの間から長次郎谷側に下ると、テントが二張りほども張れそうな岩に囲まれた平坦なスペース。池の谷乗越。

右手の踏み跡をたどり、岩の斜面を登って稜線に出ると長次郎の頭(ズク)。

いったん下ってさらに右側に回り込むと懸垂のポイントが二か所、ガスの中に見えた。手前のポイントに、自分のスリングを掛け足して懸垂下降。長次郎のコルに降り立った。右手に続くガラガラの踏み跡を斜上気味に登りきって休憩。一息入れて、上端を右手に回りこみ、岩稜の中を稜線に向けて登っていくと、ガスの中に祠が見えた。剣岳の山頂であった。15時。

 [峰を過ぎたあたりから、周囲の眺望がまったくなくなり、剣岳の本峰すらも見えない状態の中で見当をつけながら進んだのだが、最後のツメの長次郎の頭、長次郎のコルを確信をもって特定できなかったので、まだ先だ、と思っていた剣山頂にあっけなく出てしまったのは嬉しい誤算だった。

 15時14分、下山開始。鎖場にさしかかるとパラリと来たがすぐに止んだ。16時20分、前剣のピークで一休み。17時15分、一服剣のピークを通過し、17時40分、剣山荘着。18時31分剣沢のBC着。

 朝の雨で今日の行動をやめた人たちも多かったようだが、天気は下り坂である。

 夕食をつつきながら長かった一日の行動を語り合う。二人とも満足そうである。

<休憩の笑顔>

8月15日(金)

シュラフの中で横になっていると、時折強い風がテントの底を持ち上げるようにして吹きつける。フライシートを開けて、テントから頭を出すと、剣岳が眼の前にくっきり。ただ、頭の部分だけガスに隠れている。天候は曇り。朝食をとっている間に、陽が陰って風が強さを増した。撤収を始める頃には、周囲のテントは風に押しつぶされたり、飛ばされたりしている。私たちのテントのポールも曲がってしまった。一面、雲とガスで、視界も数十b程度になった中を出発する。ザックを背負い、ストックを突いていても、間歇的に吹き付ける強風に飛ばされそうになる。時間を追うごとに風は強さを増した。雷鳥沢キャンプ場付近から雨が降り始め、間もなく本降りになった。ミクリが池、山崎カールを過ぎる頃には叩き付けるような雨となり、全身ずぶ濡れの状態で室堂ターミナルに着いた。

 

【記録】

2014年8月12日

22:00 川島パーキングエリア集合・出発

8月13日 晴れ

01:33立山駅駐車場−06:30ケーブルカー乗車−06:50美女平バス乗車−07:30室堂着07:50発〜07:55ミクリガ池温泉ロッジ08:25発〜09:10雷鳥平キャンプ場通過〜10:57剣御前小屋着11:07発〜12:00剣沢キャンプ場着/設営後、剣沢付近の偵察

8月14日 曇り時々小雨のちガス

02:00起床03:18発〜03:25剣沢小屋03:48発〜04:05剣沢雪渓〜05:08長次郎谷出合〜05:55休憩06:03発〜06:45熊の岩下部〜08:05XYのコル取り付き〜09:05 2ピッチと稜線トレース〜09:15休憩。Y峰手前ピーク09:27発〜09:38Y峰のピークから懸垂終了〜09:41二本目の懸垂〜09:46懸垂終了〜09:55Z峰のピーク。三本目の懸垂終了。[峰の登り〜12:00[峰のピーク。懸垂〜12:34ガレたぼろぼろの斜面に下降〜12:47八ツ峰の頭。休憩13:00発〜13:15池の谷乗越〜13:50長次郎の頭〜14:07懸垂〜14:15懸垂終了。長次郎のコル〜14:30休憩14:40発〜15:00剣岳山頂(2,999m)15:14発〜16:20前剣頂上。休憩16:35発〜17:15一服剣頂上通過〜17:40剣山荘着。休憩18:00発

〜18:31剣沢BC着

8月15日 曇り後風雨

05:35起床07:50発〜08:10別山への分岐〜08:37剣御前小屋着。休憩08:43発〜09:24雷鳥沢キャンプ場通過〜10:04室堂ターミナル着