2015.9.20 夜叉ケ池から三周ケ岳
洞 井 孝 雄
夜叉壁と飛龍の滝
9月20日、早朝に家を出て、岐阜県側の登山口に着いた時は、目指す稜線に白い雲がかかっていた。
いったん沢に下り、右岸、左岸に渡り返して山腹につけられた急登から樹下の緩やかなアップダウン。目の前に、夜叉壁と呼ばれる切り立った岩峰の荒々しい姿を望むようになる。時折日が差し、ひんやりとした空気がすがすがしい。幽玄の滝を過ぎて、ロープや鎖のつけられた岩場の登りにかかる。右横に三段の昇竜の滝が走り落ちるのを眺めながら登り切ると県境稜線。稜線の向こうは福井県側。眼下に夜叉ケ池が見える。稜線付近にはガスがかかっている。
池に下りるのはあとにして、そのまま右手に三周ケ岳へ続く尾根道を登る。最初のコブを登り切ると、ガスの流れの中に、緑と岩峰の尾根が眺められる。夜叉壁側が切れた尾根上の緩やかなアップダウンが続く。かわいらしい岩のピークをいくつか超えるとササが現われる。踏み跡はしっかりしているが、足先で踏み跡を探り、倒れ掛かるササを漕いで進むのは体力が要ったが、かつての鈴鹿のヤブこぎが思い出されて楽しかった。背丈ほどもあるササに灌木の枝や低木が混じるようになり。ナナカマドが美しい。西側にいったん下って稜線へ向けて樹下を登り切ると、一等三角点のある三周ケ岳の山頂に出た。低い灌木に囲まれた山頂だが、周囲にさえぎるものがないので、晴れていれば眺望はさぞかし、と思われる。残念ながら、この日はガスで福井県、滋賀県側は真っ白。岐阜県側も手前の深い樹林が見えるばかりだった。
夜叉ケ池に戻って、池の畔に降りる。池の周囲には木道が作られ、以前は手を浸すこともできた池には立ち入れない。パトロールの人と言葉を交わす。希少種ヤシャゲンゴロウの保護のために数年前からこうなったのだという。今年は天候不順で、モリアオガエルの産卵も遅く、孵って池に落ちたオタマジャクシもカエルにはなれないだろう、との話。以前は池からうじゃうじゃと愛嬌のある顔を出していたイモリも数が少なかった。
再び登山道に戻って三国岳へ向かう。最初は岩交じりの急な登り。登り切ると、ササと灌木の尾根歩きが始まる。ガスはますます濃くなって、上空も真っ白。足下の踏み跡は明瞭だが、ササで覆われて見えない。足を踏み出すと脛に固い枝が当たって痛い。だんだんとササの背丈が高くなり、山腹のやぶの中を上り下りするようになる。ササと、足下の土の斜面が滑りやすい。ガサガサと進むうちに、踏み跡の真ん中に石の道標が埋まっている。1206mのピーク。先に進むと、10mも進まないうちに灌木とササが入り混じって、踏み跡が不明瞭になる。ところどころにつけられた赤テープがかろうじて方向を教えてくれるが、絡んだササにさえぎられて、なかなか前に進めない。15分ほど悪戦苦闘したが、この調子では三国岳までかなり時間がかかりそうなので、引き返すことにした。ヤブこぎを承知で出かけたのだが、ちょっと残念。心を残しながらの下山になった。夜叉ケ池まで戻り、一気に駐車場までくだった。結局、下って来るまで稜線は雲の中であった。
夜叉ケ池の周囲も秋
【記録】7:05登山口発〜8:13幽玄の滝〜8:47夜叉ケ池〜10:02三周ケ岳頂上10:18発〜11:25夜叉ケ池11:38発〜12:18P1206〜12:35撤退〜12:48P1206〜13:29夜叉ケ池〜14:28登山口着
三周ケ岳の一等三角点