2015年10月24日(土) 四国・石鎚山(1982m)

静かな東稜から喧噪の頂上へ

洞井孝雄

 

<石鎚スカイラインから見る東稜と石鎚山>

 10月24日(土)、四国の石鎚山に登った。メンバーは洞井、高知勤労者山岳会のNさん、かめのこ山の会のAさんの三名。私にとっては初めての石鎚山である。

石鎚山は標高1982m。日本百名山のひとつで、白山以西の西日本最高峰。最高地点とされる天狗岳(1982m)をはさんで南東に南尖峰(1982m)、北西に弥山(1974m)の三つの峰の総称で、それを中心とした石鎚山系は東西に長く四国の脊梁山脈をなしている。石鎚スカイラインを使って土小屋から登り始めるルート、ロープウエイ下谷口から石鎚神社を登山口とする表参道と呼ばれるルート、梅ケ市から堂ケ森経由で石鎚山へ至るルートなど多くの登山道がある。本州から四国へ渡って石鎚山へ登る人たちの多くは、石鎚神社からのコースをとることが多いようだが、私は高知が起点だったので、高知市内から車で約2.5時間、石鎚スカイラインを通って土小屋を登山口に一般道の途中から東稜に入って山頂を目指した。天候は晴れ。

<天狗岳から弥山方面を見る(右側が北壁)>

06:00 高知市内発。面河渓谷の分岐を過ぎ、スカイラインのゲートを過ぎて土小屋 に向かう。ゲートは午前7時に開き、午後5時には閉じるそうなので、こちらから登るひとは早朝、といってもかなりゆっくりのスタートになる。

08:30 土小屋駐車場着。

08:46 足回りを固め、荷物を背に、発。緩やかな山道を登っていく。ブナと雑木の樹下の広い道。なんといっても、ザックが木の枝に引っかからない、足下もよく踏まれた道なのが有難い。

09:16 「ベンチ1」通過。左側は開けて、さきほど上がってきたスカイラインとその周囲の紅葉の山腹が美しい。

09:25 「ベンチ2」通過。

09:42 「ベンチ3」(東稜の基部)。休憩。ここから一般道と分かれて東稜は左手のブッシュの中から始まる。

09:52 発 急な登りになる。頭を上げると左手に、西の冠がよく見える。ササの間に岩が現われる。急な登りが続く。大きな岩を回り込むようにして越える。

10:30 矢筈岩基部。急斜面で足を止めて、上を見上げると、二つの岩峰がのしかかるようにそびえている。なるほど、二つの大きな岩は、矢筈(ヤハズ:矢を弓につがえる羽根の部分)によく似た形をしている。その間のササの中の急斜面を登る。

10:35 登り切ってコル(南沢の分岐)に出る。いい休憩場所である。前には急な傾斜のササの斜面が広がっている。

10:45 発 コルからはしばらく、山腹の狭い踏み跡のトラバースになる。積雪期は雪の状況によっては、簡単なときも、こわくて極端に難しいトラバースになる時もあるという。右側(山側)は立っていて、足下からはずっと急な角度でササの斜面が落ちている。踏み外せば下まで止まるところはなさそうである。トラバースを終えて痩せた尾根をたどると、また、岩の登りが現われる。かぶり気味の岩の乗っ越し。高度感があるので、先にザックを外して岩の上に上げて体を持ち上げる。

<東稜の岩場を登る>

11:12 さらに一段岩を攀じると、ちょっとしたスペースに出た。南尖峰のピークだ。ここに立つと、北西方向にピークが見え、立っているひとの姿が目に入ってくる。最高峰・天狗岳の頂上(1982m)だ。その向こうに弥山の頂上、こちらはひとがこぼれそうである。左手前方には弥山から西の冠、二の森、堂ケ森のピークが連なっている。右手には、瓶ケ森方面の連なりが広がっている。アルプスなどの頂上に立った時の景色は、目線と同じくらいの高さで、線としての稜線の連なりを望むものだが、ここでは、周囲に見える峰々のピークと稜線、そこにつけられた踏み跡、沢筋…全部が足下に広がる。周囲の山域全体を面として俯瞰でき、地図と立体的な山域の概念をはっきり照らし合わせながら見ることができる。まるで鳥になった気分だ。

11:21 天狗岳(1982m)のピーク。これまでは、ひとりの登山者の姿もなかったのに、急にひとの姿が増えた。前に見える弥山から入れ代わり立ち代わり登山者が登ってくる。一息入れる。微風。青空が広がって眺望も素晴らしい。

11:40 出発 ここから先は静けさとは無縁の世界。

弥山に続く稜線の右側は標高差約100mの切り立った北壁である。終了点近くから身を乗り出して覗くと、顕著な凹角が見える。ほとんどがA1のルート、下部は、岩から離れると、ぶら下がってしまって登れないくらいかぶっている。壁の上端から離れて、いったん下ったコルからは鎖場になっていて、弥山の山頂とコルの間は大渋滞である。足が止まってしまって動かない。交通整理をして、渋滞を適当な人数で登りと下りを切り分ける。

12:12 弥山発 エキスパンドメタルの踏板が固定されたジグザグの道が続く。緩やかな傾斜の道だが、スチールの隙間から見ると、足下には地面がない。ほとんど崖に道が「造られて」いるのだ。弥山の山頂直下は、設置された歩道がなければ、相当に険しい。

12:17 北壁基部の分岐。北壁へはここから取り付くのだが、登り切るのに3時間はかかるらしいが、一般道を登ると5分かからない。岩登りはたいへんなのだ。

12:35 土小屋とロープウエイ方面への分岐通過。

12:56 ベンチ3。東稜の基部だ。休憩。まだこの時間から山頂に向かうひとが多い

13:02 発。緩やかな広い登山道を、二度ほどアップダウンを繰り返す。

13:50 登山口着。駐車場までの道路の路肩にも車が止められている。

 あまり汗もかかなかった。よく晴れて、暑くもなく寒くもない最高のコンディションのもと、初めての石鎚山でミニ・バリエーションの静けさと四国で最も人気が高いといわれる山の喧噪の両方を堪能させてもらった。

 

<南尖峰にて>