北ア・剣岳北方 チンネ左稜線
目的: チンネのクライミング
ルート: 室堂〜剣沢〜長次郎谷・熊岩〜
チンネ左稜線〜(同ルート帰る)
メンバー: L 時生S 裕幸T
記録:
5・27(金)
3:00 半田 発
7:00 立山駅 着・途中時々雨、今小やみ
7:20 立山駅 発
8:15 室堂ターミナル 着
8:45 室堂 発・小雨、カッパ着て出る。周りは雪だが少なめ
9:05 アイゼン着ける
10:30 休、雨やむ・雷鳥沢から左の尾根筋を登る
11:30 別山乗越(剣御前小屋)急登にあえぎ、やっと到着。20k超のザック はさすがにキツイ。 久々の剣は相変わらず美しいが雪少なく黒い。
12:10 剣沢小屋・小屋でビール1本ずつ購入
12:55 剣沢、長次郎谷出合・晴れて結構暑くなる
1:50 休
2:35 休 熊岩はすぐ上に見えているのだが一向に近づかない。もうバテてヨレヨレ。
3:35 熊岩下テント場 着・晴れ。風わずか。剣沢以降全くひと気無く、静かな長次郎谷を独占。目の前には八つ峰の6峰フェースが林立。最高の天場です。テントに入って雪溶かして水作り。夕食は豚の生姜焼き。ビール、ワインでゆっくりと過ごす。7時すぎに就寝。
5.28(土)
3:05 起床 朝食ホットドック
4:20 テン場 発・うす曇り、無風、暖かい
5:20 池の谷乗越し・朝イチから急登にあえぐ
7:00 チンネ左稜線 取付き 着・池の谷からの巻き道でルートをはずし、妙なピークに着いてしまう(後に判明するのだが、チンネの頭だった)。すぐ下に池の谷ガリーが見えたので無理矢理クライムダウン。やっと取付き。天気は上々。朝から誰にも会わず、チンネを独占だ。
7:40 クライミング開始
8:10 1P:30m Sリード・ これ以降、ツルベにてタテちゃんと交互にリードを繰り返す。階段状からすぐバンド。クラックを少し登りハイマツテラスにて切る
8:50 2P:35m 草付きからルンゼ状を登るが濡れており、ちょいコワ
9:20 3P:30m (S)右側のカンテを気持ちよく登る
9:50 4P 40m(T)ピナクル下。ここも快適なリッジ。ここで大変なことに気付く。左稜線のピナクルとはまるで形が違い、良く見渡すと左の稜線下の方に左稜線のピナクルが見え、「左稜線でなく、左下カンテ」を登っていることが判明。もう少し上で合流できそうなのでこのまま登ることにする。
10:15 5P 40m・ルートが左右してザイル重くて綱引き状態。左へ少し回り込む。
10:30 6P 10m・ガレっぽい所を少し登ると左稜線のピナクル林立地帯(7P終了点)に出る。目の前にクレオパトラニードル
11:10 7P 40m・左稜線に戻り気持ちいいピナクル越え。遠く後立などアルプスの山々、目の前には八つ峰。うれしくて顔がゆるむ。
12:00 8P 40m・T5の鼻。核心のハング越えだが順番通りタテちゃんにリードしてもらう(ルート外したせいで1Pずれた)ナイスクライミング!
12:20 9P 25m・クラックの入ったリッジからフェース。ちょっとバテぎみだが とても楽しい。10P15m リッジをひと登り
12:50 11P 25m・ナイフリッジをワクワクで登る。ロケーションも最高で終わるのが惜しい。
1:20 12P 45m (チンネ頂上)最後Tちゃんに締めてもらって終了。なんと朝迷ってたどり着いたピークでビックリ。1周したことになる。天気はずっとうす曇り(展望は良)。暑くもならず風も無し。最高のコンデションの中でチンネを1日独占。幸せでした!名残を惜しんでゆっくり休む。
1:50 チンネの頭 発
2:15 池の谷乗越し・チンネからふつうは池の谷のガリーへ懸垂で下ってガリーを登り返すのだが、朝通った巻き道を戻り、なんなく乗越しへ到着。ラッキー!
(ただし危険もあるのでヘタなのは連れていけない)
2:50 熊岩下テント場 着・暑くなり、長次郎谷の雪はグズグズ。慎重に下る。相変わらずヒト気なし。静か。風も無く暖かいのでテントの外で食当。夕食はトマトのスパ。タテちゃんの食担はいつも有難い。残ったワインやコーヒーなど飲みながら6時頃まで外で過ごす。
5月29日(日)
4:30 起床・今日も青空。朝食はヤキソバ。出発前に長次郎谷登る3人Pa発見。初めて見る人影だ。
6:00 熊岩 発・ザックの中身ほとんど減らず重い
6:50 休 剣沢出合・下り1本でもうすでに足ガクガク
8:00 休 黙々とひたすら登る。
9:10 剣沢小屋・疲れた。テント1張り有り
10:15〜45 剣御前小屋・マジつぶれそう。大休止。
11:25 雷鳥沢南・雪渓を最短距離で下る
1:05 室堂ターミナル 着・久々のマジバテ。腹の調子悪く、足にももう力入らず。最後は5分と続けて歩けない。遠かった!天気は良く観光客たくさん。
1:40 バス乗車
2:40 美女平
2:50 立山駅 着
3:15 〃 発
7:30 半田 着・途中から雨。行き帰りだけ雨でした。
秘境
裕幸T
剣澤小屋泊でチンネ往復の予定が満室のため熊岩でのテン泊になった。おかげで剣の奥深く人を寄せ付けない秘境で二泊でき(我々のみ)、二日目のチンネ登攀も時間的に余裕ができました。チンネ登攀後の二日目の夕食は絶景の中、テントの外でスパゲッティとワインで祝杯をあげるなど、のんびりと至福の時を過ごすことが出来ました。しかしながら熊岩まで重い荷物を背負っての往復はとても大変で、帰りの室堂では二人ともヘトヘト。
チンネ取付きまでは雪渓とガレ場、取付きまでとチンネ左稜線でルートミスをしたが、それを取り返す技術・体力・判断力が試された。新海さんとの間のお互いの信頼関係があったのも良かったと思う。チンネ自体はそれほど難しくないですが、そこから見える景観・高度感はとてもすばらしく本当に楽しい登攀が続きます。核心部は9ピッチ目のはずだったのですが、8ピッチ目にきてしまい、順番だからと譲って頂いた。おかげでチンネ左稜線の核心部をリードで登ることができました。これまで積み上げてきたものを総動員しての山行、疲労困憊でしたが、充実感でいっぱいです。ありがとうございました。
待望のチンネは最高に幸せな場所でした
時生S
正月の槍は4年かかりましたが、剣のチンネは実に5年かかりました。5年前から3年間毎年ガイドをお願いして計画していましたが、2年は雨天中止。3年目は現地まで行きましたがやはり天候不良で雪の八ツ峰を登ってきました。これはこれで良かったのですがいつも同行していたIさんはしびれを切らして平日に行ってしまいました。去年からもうガイドいなくても自分で行けそうだとタテちゃん誘って計画しましたがあえなく中止。最低でも3日かかりますからもう1度はなかなか出来ません。5年目突入です。
長次郎谷雪渓の安定と小屋開きの加減でこの時期(5月末から6月初め)に計画することが多かったのですが天気は安定しません。今年は剣沢の小屋に泊まって無理矢理1日でチンネピストンという腹積りだったのですが天気の加減を見ているうちに小屋が満員(定員制)になってしまい、去年同様熊岩テン泊で出かけました。結果的には良かったですが雪のテン泊でクライミング用具一式詰めると、ザックは20kgをゆうに越えてしまいます。
剣沢まででも結構つらいですが、そこからまた下った後しっかり登り返しです。一日目からグッタリでした。その替わりこの時期、剣沢から先まったくヒト気はありません。長次郎谷から目の前の八ツ峰もすべて2人で独占です。穏やかな天気の中、静かで快適なテント生活を2日間満喫できました。風も無く、雪の中なのに全く寒くない。男2人というのがちょっと寂しいですが、帰りの行程さえ考えなければ最高のテン場でした。
肝心のチンネです。いろいろ想定外のハプニング(記録参照)もありましたが、最高に気持ちのいいクライミングを楽しむことが出来ました。北アの山々を眺めながらスカイラインを攀じって行く時は「クライミングやっててよかった〜!」とつくづく思える瞬間です。また難度がそこそこで嬉しい。登るのに必死というのもつらいものです(達成感はありますが)。適当にドキドキしながら林立したピナクルやリッジを渡って行く時など声をあげたくなるほど幸せでした。12ピッチ、それなりに疲れを引きずりながらもこのままずっと登っていたいと思っていました。「頂上に着いてしまうのが惜しい」こんな気持ちは初めてです。他に人がいなく独占という事もありましたが、タテちゃんのおかげもあります。気持ち的にとても楽が出来ました。またいつかこんなクライミングをしてみたいものです。ただ帰りは減らない荷物にあえぎ、行き以上にヨレヨレで、室堂があんなに遠かったのも初めてです。でもそんな苦労を倍返ししてくれる天国の様な所でした。