加賀 白山 (2702m)
<山行日程>
2016年10月9日(日)
<天候>
雨のち曇り、時々晴れ間
<山行目的>
紅葉を楽しむ
<ルート>
市ノ瀬〜別当出合〜観光新道〜弥陀が原〜室堂〜御前峰〜室堂〜砂防新道〜別当出合〜市ノ瀬
<メンバー>
L:孝雄H
SL・会計:那津子M
記録:慶子M
食担:マイケルM
(渉外:会員外 O知子 みどり)
<記録>
4:50 名古屋市昭和区集合・出発
8:20 市ノ瀬ビジターセンター着
8:50 バス発
9:05 バス別当出合着
9:10 別当出合出発
10:10 1633m地点休憩(4分)
11:00 1860m地点休憩(6分)
11:35 殿ヶ池避難小屋着
11:50 衣服調整
12:00 馬のたてがみ通過
12:16 蛇塚(休憩5分)
12:53 室堂ビジターセンター着(休憩10分、ザックデポ)
13:40 山頂着(休憩5分)
13:45 山頂発、下山開始
14:10 室堂着(休憩10分)
15:17 甚之助避難小屋着(休憩7分)
15:48 別当覗き
16:44 別当出合着
17:00 バス発
17:15 市ノ瀬ビジターセンター着
17:30 市ノ瀬ビジターセンター発
(途中夕食)
22:00 ミグリアーチ宅着
(記録 慶子M)
久しぶりの山行は
思わぬ展開に…
慶子M
槍ヶ岳からの帰り道に思わぬ訃報を聞いたのが2ヶ月前。すぐにアメリカに行って帰ってきて、その後またすぐにインドに調査に行って帰ってきて、山登りは今回の白山が復帰第一座になりました。「紅葉をたっぷり楽しめるようにゆっくり一泊で」と聞いてそれなら多分大丈夫と、やっとつながったインターネットでインドからお返事し、のほほんと用意を進めていました。それがまるで嵐のような状態になったのは前日。前々から懸念されていた悪天候の予測に加え、思わぬ通行止めやマイカー規制。急いで計画書を書き直すなんて離れ業をやってのけただけでは終わらず、当日も刻々と変更される計画。結局、のんびり紅葉山行は、ほとんど休憩なしの修験道みたいな山行になりました。足下が覚束ない私はもう必死で下ばかりみて、できるだけ遅れないように、変なところに足をおかないように気を張って、下山なのに、寒いのに汗だくというとても喜劇的な状態に陥りました。「何だその不機嫌そうな顔は」と言われても必死なのですから仕方ありません。気持ちは先頭を行く方にしっかり寄り添っているのですが、どうして物理的な距離はどんどん開いていってしまうのでしょう!それでもちゃんと上まで行って下まで降りてきて、ぱっとしないお天気ながらも時折現れる晴れ間から覗く変化に満ちた景色、美しい紅葉、遠くの山並みや谷から、お天気がよければさぞかしよい山なのだろうということが伺えました。またぜひ、今度こそゆっくり楽しみに来たいです。
インド調査後の疲れが残る身にはなかなか過酷な山行でしたが、一つ意外だったのは膝があまり痛くならなかったことです。実は私はひょんなことからバンガロールのアユールベーダ総合病院に2日間入院するという経験をしたのですが、ここぞとばかりドクターに「私は山登りをするのだけれど、もう慢性的に膝が痛い。特に下山は辛い。なんとかなりませんか。」と泣きつきました。するとドクターは「これでドラマチックに良くなると思う」という思わせぶりな言葉とともに、薬草を錠剤にしたものと薬草を溶かし込んだオイルを処方してくれました。入院中は毎晩温めたそのオイルを持ってセラピストが二人(片膝に一人)やってきてマッサージもしてくれ、ヨガの個人レッスンでは膝の回復を促す動きを習ってきました。そのせいか今回膝がこれまでのように動きを制限するほどは痛くなりませんでしたし、痛みが後々まで残りませんでした。これまでだったら、あんなスピードで休憩なしで下山したりしたら膝が割れそうになっていたはず。さすがアユールベーダ5000年の歴史です!
白山:10/9/16
Michael M
Our original plan for the hike on the 9th of October was an overnight. We were going to take the rather long trail to the top of Hakusan and back over two days. However weather, and road closures led us to make it a one day trip.
As we hiked we changed our plan a few times. We decided to hike just to the lodge near the top of Hakusan and turn back. However, once we were so near we decided to go up as close as we could in the time we had left. As we reached to peak we decided to change again and just make it all the way to the peak.
I’m glad that we did that, as it is always a good feeling to make it to the top of a mountain, but I was not well prepared. Since I thought we would not make it to the peak I was not dressed warmly enough for the high winds we encountered, and I got a little frozen on the way. Also the choice to go to the top left us with little time to make it back to meet our bus!
But we made it with about 15 minutes to spare and we could catch our breath. It was a challenging hike, especially since this was my first since the summer Gashuku in August. I spent the next few days a little sore, but better for the experience. I really love Hakusan and we had a great group for the trip.
(翻訳)
10月9日に行った山行のもともとの計画は1泊だった。白山の頂上まで往復するちょっと長い道のりを2日間かけて歩くつもりだったのだ。だけどお天気や通行止めなどの理由で日帰りになった。
歩きながらも計画は何度か変更された。頂上近くの休憩所まで行って引き返すつもりだったのに,進むにつれて残った時間で行けるところまで先に進むことになり、頂上が近くなるとやっぱり最後まで登ることになった。
行ってよかったとは思う。山の頂上まで登りつめることはいつも気分がいいものだから。でも僕は十分な準備ができていなかった。頂上まで行くとは思っていなかったので、あんな強風に耐えられるような暖かい格好をしていなかった。それで道中凍えそうだった。それに頂上まで行くことにしたせいで、最後のバスまでの時間がちょっとしかなくなった!
だけど僕たちはバスが出る15分ぐらいまえにたどり着けて息を整えることができた。今回の山行は8月の合宿後初めてだったこともあって本当に大変だった。2、3日はあちらこちら痛かったけどいいトレーニングになった。僕は白山が大好き、それにグループのメンバーもとてもよかった。
2016.10.9 加賀/白山
雨のち曇り時々晴れ、強風
孝雄H
市ノ瀬から白山の御前峰を往復した。
10月の9日・10日、岐阜県側の平瀬道から白山に登り、南竜ガ馬場でテントを張り、一泊して帰ってくる計画だった。ところが出発の前々日、大白川キャンプ場に入る道が崩壊して通行止めとなり、急きょ計画を変更して石川県側から登ることになった。
市ノ瀬〜別当出合〜観光新道〜弥陀ヶ原〜室堂〜御前峰〜室堂〜南竜が馬場(幕営)〜砂防新道〜別当出合〜市ノ瀬という計画である。当初のコースが通行止めとなって、今回の計画をなかばあきらめかけている仲間たちに、慌ただしく計画書の作り直し、留守宅本部への連絡や周知をしてもらった。
会の遭対担当は私なので、その立場から言えば、こうした直前の変更はあまり歓迎すべきことではないが、すでにチェック済みの計画の中で、山域はそのまま、当初のルートが物理的に通れないという事情で次善のルートへの変更、ということであれば、そのルートが当初の計画とかけ離れたものでなければやむを得ない対応だろうと思う。
メンバー5人。
早朝、名古屋高速に入った時には前が見えないくらいの雨だったが、北陸自動車道に入り、勝山から市ノ瀬に向かう頃にはほぼ上がった。
計画を立て直すために、道路の崩壊状況については調べたのに、市ノ瀬からのビジターセンターに着いた時点で、もうひとつ計画に穴があったことに気づかされた。市ノ瀬から別当出合まで車が入れると思っていたのだが、その区間はマイカー規制でシャトルバスを使わなければならなかったのだ。
前夜の計画変更から明け方の雨、予定外の(これは私たちが悪いのだが)マイカー規制早朝の半覚醒状態の私のテンションは下がりっぱなし。ただでさえ、朝は弱いのだ。おまけに車を降りた時の気温の低さはどうだ。幕営具を担いでの登りの大変さを想像すると、いささか腰が引ける。天候は午後から回復基調にあるという予報だったが、そんな気配もない。
「幕営具や共同食は置いて荷を軽くして、登れるところまで登って下ることにしたい」
そう提案して、ベーシック装備のみで出発することにした。
シャトルバスは20分間隔、片道500円。別当出合の最終バスは17時だという。この17時が引き返すリミットの目安になる。
バスに揺られること15分、別当出合では雨がぱらつき始めた。
雨具を着て9時5分、出発。砂防新道の入り口のつり橋を通り過ぎて、観光新道に入る。砂防新道を登るひとたちがほとんどで、こちらのコースを登る登山者は少ない。最初の内は急な登り。やがて、少し傾斜が緩くなる。道の広さとカーブの具合が絶妙で、切れ目なく樹林が適度な距離で視界に入るように続いている。よく踏まれたいい道である。
オーダーは森下、小栗、マイケル、慶子、私の順。心なしか森下のペースが速い。小栗がぴたりと二番手をついて行く。マイケルが後に続く。しばらくして慶子の前が少し開き「もう少しゆっくり」の声がかかる。
1時間ほど歩いて雨具を脱ぎ、オーダーを私、慶子、マイケル、小栗、森下と出発時の逆に替えた。私が先頭に立つ。
晴れていれば左右の足元や雲の向こうに大きな景色が広がるはずだが、あいにくガスで足元とその少し先の景色しかみられないのは残念。尾根上の平坦な部分で休憩をとった。出発から2時間ほどのところだ。
一瞬ガスが晴れて、紅葉のグラデーションがかかりはじめた広い山腹が見えた。正面の尾根も露出した巨岩の中を縫う道も見える。
30分ほどで殿ケ池避難小屋に着く。トイレ休憩。きれいな避難小屋である。中には登山者が数人。うまく使えば、こんな天候をやり過ごして山頂を狙うことも可能かもしれないな、などと思いながら出発する。森下から「まだ登りますか?」と声がかかる。
「13時前後くらいがタイムリミットになりそうだな。まだ先へ行けるだろう」、時計を睨みながら答え、先へ進む。馬のたて髪と呼ばれる痩せた岩交じりの尾根を登り、少し進むと蛇塚(2240m)である。一息入れて歩き出す。10分ほどで弥陀ヶ原に出た。だだっ広い草原の中に、木道が1kmほど続く。無雪期ならガスの中でも木道を歩いて行けば室堂に着いてしまうが、雪に覆われる季節は一度方向を失えば命を失いかねない。美しいけれども恐ろしいところだと思う。銀色に光る平坦な木道の上を歩き、やがて岩の間を縫うようにして登ると室堂センターの大きな建物が現れる。周囲はガスに覆われて風が出始めている。私以外は荷物をデポして空身で、御前峰へ向かうことにする。
センター裏手の鳥居をくぐって、山頂方面への道を登り始める。時刻は13時を回っている。13時30分をリミットとして行けるところまで行こうと伝える。ガスで周囲は真っ白。風が強い。寒い。すぐに手の指先がかじかんで感覚がなくなってくる。
時計を見て立ち止まる。リミットである。その時、少しの間、ガスが吹き払われ、御前峰と上空の青空が目の前に広がった。ここから下る、と言えば誰も文句は言わないだろうが、気持ちの上では悔いが残りそうである。頭の中で忙しく残りの距離と時間をはじく。
「これを見たら、行くしかないなぁ。その代り、下り、しっかりついて来いよ」と言い渡して登り続けた。一歩足を出すごとに体が揺れるほどの強風と、手袋をした指先の感覚がなくなるほどの冷たさだったが、13時42分、御前峰頂上着。すぐに下山開始。
14時15分、室堂センターで荷物を背負い、弥陀ヶ原から黒ボコ岩の分岐に下って砂防新道に入った。
私たちが下っていくにつれて、その部分だけ、周囲のガスが吹き払われて、急な岩場の下降路や沢筋のトラバース、紅葉し始めた広大な山腹や尾根道などの景色を小出しに見せてくれて飽きることがなかった。ただし、別当出合までの5kmなにがしの下降と時計の針の進み具合との追いかけっこである。
後続のメンバーとの間隔が少しずつ開き始める。だんだんとメンバーの口数が減り、表情が硬くなってくるのは仕方がないが、山頂へ向かうときに確認したように、しっかり後をついて来てもらわなければならない。「時間がない。あとちょっと頑張ろうな」
「どうした? 笑顔がないぞ」
機械的に足を運んでいると、何かが起きそうである。ときおり振り返り、声をかけ、を繰り返しながら下った。甚ノ助避難小屋のベンチで休憩し、別当覗きで別当出合の方面を眺めようと足を止めたほかは、ほとんど休憩なしの下山。登山口のつり橋を渡り、別当出合の駐車場に着いたのは16時40分。
最終のバスが止まっており、この日最後に下山してくる登山者待ちの運転手、車掌に迎えられる。
「最終は5時です」
「間に合ったみたいだね」
「後ろに降りて来る人はいませんでした?」「後ろにはいないみたいだよ」
他のルートを下って来た登山者が何人か乗り込んできて、「やっとみなさん揃いましたので出発します」、予定の17時より2分遅れてバスが動き始めた。細い急な道路を揺られているうちに、周囲が暗くなり始めた。
「テントや食料の用意をしてもらったのに、日帰りになってしまった。いろんな条件が重なったので、今回はまあ、これでよし、とするしかないな」「まさか、行けてしまうとは思いませんでした」そんな話をしながら帰って来た。
豪雨のち曇り時々晴れの白山だった。