第44期の夏山合宿は、北アルプスで実施された。当初は7月27日~29日、二泊三日で、扇沢~蓮華岳~針ノ木岳~爺ヶ岳を縦走する計画だったが、荒天に向かっている状況を勘案し、第一日は針ノ木小屋~蓮華岳往復、第二日目は以後の計画を割愛し、そのまま扇沢に下った。6回の打ち合わせ、7回のトレーニング山行を実施して臨んだ夏合宿だったが、この蓄積は次につなげていくものとしたい。
【参加者】洞井孝雄(CL)、R.I(SL)、H.C、I.Y 小栗一則(BL)、K.H(BSL)、S.A、Y.Y
【記録】
2024年7月27日(土) 曇り
04:00 知多半島出発
07:45 扇沢P着
08:07 発
09:40 大沢小屋
10:33 雪渓末端。アイゼンつける
10:57 発
12:08 雪渓おわり
13:34 針ノ木小屋着
14:20 設営完了
15:09 蓮華岳へ向け出発
16:10 蓮華岳(2799m)
17:00 針ノ木小屋着
18:00 テント場で夕食、就寝
7月28日(日) 小雨、風
04:30 気象・朝食。撤収。
針ノ木岳往復は取りやめ、そのまま下山を決める
06:07 発
06:18 針ノ木小屋
06:27 下山開始
07:08 雪渓に入る
07:50 雪渓おわり
08:34 大沢小屋
09:47 登山口着
09:52 扇沢P着 (記録:小栗一則)
針ノ木雪渓、蓮華岳往復
7月27日。早朝、知多半島を出発し、扇沢~歩き出す。大沢小屋を過ぎ、雪渓の末端が見えるところに出た。末端でアイゼンをつけ、スプーンカットの雪面を登って行く。雪渓の上部から濃いガスが下りてきて、日差しが遮られ、冷たい風が吹き上がってくると、動いていても肌寒い。汚れた雪面に残るかすかな踏み跡と、ピンクのテープのついた竹竿を便りに登って行く。
平坦な広い雪面がせり上がるように傾斜を増し、左右の岩壁が狭まるノドの部分を越える。
ずっと登ってきた雪渓の上端から、左岸のガレの踏み跡に出、溶けて穴のあいた雪面をそっと跨いで、すぐ上に続く小さな雪渓に乗る。右岸に渡ったところで、雪渓は終わって夏道に出た。ここからは急な傾斜のごろごろを登って、最終の水場を越え、ザレのジグザグ登り。小屋直下のザレのジグザグに入ると、赤茶けた土と岩の急斜面がずっと峠まで続く。
14時45分、針ノ木小屋着。
蓮華岳への往復の出発前に、明日以後の天候と、行動について打ち合わせ、今日のうちに蓮華岳を往復し、明日は状況次第だが、針ノ木岳を往復し、下山することに決まった。
15時過ぎ、蓮華岳山頂に向かう。蓮華岳の山頂までは針木岳から往復2時間ほど、稜線伝いの一本道だが、これから山頂へ向かうという登山者は少ない。すれ違うのは、すでに山頂を踏んで下ってくる人たちである。シャクナゲ、リンドウ、ウサギギク、ウメバチソウ、シナノキンバイ、シオガマ、チングルマ、けっこう花が残っている。上空にはまだ青空が顔を出しているが、尾根の両脇の山並みにはガスが流れている。足元のザクザクをゆっくり踏みながら進んでいく。途中から踏み跡の両脇に、コマクサを見るようになった。花が小さい。数も、以前来たときのようなまるでコマクサの畑の中を歩くような賑やかさもない。少々寂しい。
ときおり槍や穂高の遠い小さな眺めが見渡せる。
山頂を踏んで小屋に下り、テント場へ向かう。針ノ木のテント場は、小屋から針ノ木岳をつなぐ尾根上にある。狭い尾根の上のテント場は、平坦な場所が少なく、設営する時間が遅くなるほど小屋から離れ、急な尾根を登っていかなければならない。
夕食後、明日は天気が良ければ、6時には針ノ木岳往復に向けて出発することになった。
7月28日。3時頃から細かな雨がテントを叩く音が聞こえはじめ、時折強い雨と風でフライシートがばたつく音が聞こえるようになった。雨はずっと降り続き、針ノ木岳往復は取りやめ、そのまま下山することとした。雨の中の撤収を終え、小屋直下のジグザグの急傾斜を下る。最終の水場を過ぎた頃には、下山する幾つものパーティーの間隔が狭まって、長い列のようになった。小雨が降り続いている。
上部の小さな雪渓に差しかかると、昨日歩いた雪渓の、下部の穴の開いていた部分が落ちてシュルントになり、流れが見えている。多くのパーティーが雪渓上部の端に溜まっている。この雪渓をどう越えて、下部の雪渓までいくか、ルートを見極めかねているのだ。
仲間たちにともかくアイゼンをつけるように指示し、雪渓に一歩踏み出す。右岸寄りの雪の上を少し下って、右岸の夏道に上がり、雪渓の末端の部分をトラバースして、崩壊したシュルントの間に下りて浅い流れの中の岩に乗って左岸に出た。振り返ると、私たちの後で、様子見をして溜まっていた登山者たちが、セキを切ったようにぞろぞろと動き出した。
左岸に渡り、すぐに大雪渓の上端に乗って、下降を始める。今日はガスが巻いていないので、雪渓全体が見渡せる。下るにつれて雪渓はだんだんと傾斜を増す。両岸が狭まって傾斜の最もキツいノドの部分を過ぎ、広い、緩くなった部分から末端に下りる。雪渓の末端は大きく崩壊して、シュルントがぱっくり口を開けている。
アイゼンを外して、小小休止の後、さらに下山を続ける。細かな雨が断続的に降っているが、標高を下げて、暑くなってきているので、雨具を脱いだ。左右の山腹から上を見上げると、上部は真っ白なガスで覆われている。今日は一日、こんな天気が続きそうである。結果的にだが、下山を決めて正解だった、と思う。
舗装道路と出合い、扇沢の駐車場に着き、車に乗り込む直前、再び雨が降り出した。 (洞井孝雄)